第3話 夢売りの舞

第3話:夢売りの舞①

 舞台の上で照明を浴びる“私”は、“私”ではないの。

 役を演じるのではなく、なりきるのでもない。

 台本を読み、私の中に宿った人格が自然と踊ってくれるから。

 …だからね、

 

 “彼女”を演じる必要はないし、“彼女”になりきる必要もない。

 劇場の外で太陽の光を浴びる“私”は、“私”でしかない。

 “私”を演じる必要もないし、“私”になりきる必要もない。

 “私”の台本を読んだ事はないけれど、誰かが“私”の舞台を観ているのだから。

 地上にいる私の眼には見えないぐらい、きっと遠い場所から観ているのでしょう?

 高みの見物なんて反吐が出るけれど、それだけ高い料金たいかを払ってくれているんだもの。

 仕方ないわよね…。


 かんざしからぶら下がるガラス玉が静かに揺れた……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る