幼き日の記憶
幼き日の記憶①
俺は、誰から産まれてきたのだろうか。
俺は、何処で産まれたんだろうか。
誰か、仲間が居た気がする。
誰か、友達が居た気がする。
公園のブランコと揺れる俺は、じゃれあう子供達を遠く見つめていた。
眩しいくらいの夕日を見つめても、枯渇したのか涙は出なかった。
誰を、探していたんだっけ。
誰を、待っているんだっけ。
黄昏に染まる頃、近づく男女の影があった。
少女は隣のブランコに腰掛けると、唐突に言の葉を紡いだ。
まるで唄うように。
蛇はなんでも丸呑みするんですって。
血肉を味わえないなんて『勿体ないな』って思っていたけれど、じんわりと溶かされるのもいいかもしれないわね。
ゆっくりと時間をかけて溶かされて、身体の一部になるの。
不思議な内容の話に首を傾げると、ふわりと風が少女の髪を揺らした。
すると、少女の背後に立っていた少年が口を開く。
蛇はね、神様を裏切ったから陸地しか移動出来ない様に手足が無いんだって。
君は『悲しい』と思うかい?
『愚か』だと思うかい?
俺はね、神様は蛇の事が好きだったんじゃないかって思うんだ。
罪を犯した人の子は楽園を追い出され、逆に腐敗していく楽園に蛇は閉じ込められた。
ここだけ聞くと可哀想だけど、この後に起こる大洪水があるだろ?
地を這う事しか出来ない蛇は逃げきれただろうか。
例え腐敗していたとしても、楽園の中に居れば身の安全は保証される。
だって、神様が直々に創った壁に護られているのだから。
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