第1話 紅い林檎

第1話:紅い林檎①

 ―――なんだか、とても永い夢を観ていたような気がします。


 でも、なぜだか夢の内容が思い出せませんでした。

 どうして私は、なぜカーペットの上で寝ていたのでしょうか。 

 「……」

 まるで金縛りにあったみたいに、体が動かない。指先もなんだかピリピリするし、足も重くて…。

 いや、違う。

 むしろ軽すぎて動かせない。

 「まるで、枯れ枝みたいだな…」

 なんだか、お腹も少しすいてきた気がする。

 「…早く帰りたいなぁ」

 聴こえた自分のつぶやきに対して生まれた疑問に思わず笑う。

 だって、私はずっとこの部屋に閉じ込められていたじゃないか。

 一歩も外に出ていないのに、不思議とこの部屋が別の場所だと感じるのです。

 

 ―――畳と木の匂いのする場所だった気がするのに、ここはほんのり林檎の香りのする場所でした。



  

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