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 それから他愛ない話をしながら二杯程ワインベースのカクテルを作ったが、時計の針が三時を指した頃には斉藤君はべったりとカウンターに顔を突っ伏していた。

「ぼかぁね、しょーらいましゅたーみたいなかっこいいしょむりえになりたいんれしゅよ」

「はいはい」

 若いころ勉強の為にソムリエの資格を取っていたこともあり、斉藤君はそれに憧れているようだった。

斉藤君はワイン、もとい葡萄が本当に好きだ。それはもう泥酔もとい陶酔。純粋に葡萄が好きで、こんな俺みたいなしがないワイン好きのバーテンを目標にしてくれるくらい。

「頑張れ」

 ねこっ毛の茶髪をポンポンとすると、「すー」と気持ちの良さそうな寝息が聞こえた。

「斉藤君なら大丈夫」

 起こしてしまわないように、そっとブランケットを肩に掛けてやって出来るだけ静かに水を流した。

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