無知《ばけもの》

 ここ最近、不可思議な出来事が起きてる気がする。一人、トイレで考え込んでみた。

「むむ、妹の学校では幽霊が出た、と本人が言いますし。アイツも街で迷子になった、とか言ってました」

 前者は仮に置いておいたとしても、彼がこの街で迷子になるのはオカシナ話ですよ。ニチアサもびっくりな時間からジョギングをするような彼ですよ。その彼が、少なくともこの街で迷うのはおかしいです。

「ここは、あの先生かたに聞くべきです」

 万能ツールとも言うべきでしょう。カバンから取り出すは『スマートフォン』。起動するのはもちろんのこと青い鳥。

 学校のお昼休みは、ここで休みが終わるまでSNSです。これが、私の日常なのだ。

「…どうやら、この街で良くないことが起きてるようですね」

 そんな私の日常にもどうやら、天変地異の予兆です。いいえ、むしろそのらしいです。

 ありきたりな話を今からします。これは、私が私である、または、あった、という証明にでもしましょう。

 では、始めます。――つい先日、妹は学校で幽霊を見た。それは、実態のあるそのもと言っても過言でもない、と言いました。それは、『噂』されたこと。それはここを見れば私にもわかりました。

 青い鳥の検索欄に『この街』を打ち込み。眼鏡のマークをタップ。すると、妹が最近友達と話をすると言ってたことがたくさん出てきます。

「それは、噂話。これこそが、この街で起こる事件の理由」

 この噂話の流れを断つことはまず無理です。それは、人が無知ゆえにです。

 どうして、ここで無知が出てくるのかというと、『知らなければわからない』。ということです。では、次にそのことを話しましょう。

 無知ということはわからない。これは正しい因果になっています。知らないならば聞いても知らない、わからないからです。しかし、今はこうです。『無知だから噂は止まらない』ということ。ここに、因果はおろか条件が整っておりません。ならば、これならどうでしょうか。1つ、この話をしてるものが。いえ、噂話にすぎません。ですけど、そうなんです。噂話なんです。

「噂とは、迷信や嘘といった虚無のこと。もしも、これが伝承とかのレベルならこの街は崩壊でもしていたでしょう。それは、今の私でもわかります」

 ならば、これは何か。そうですね、簡単に言ってでしょうか。…しかし、噂でこの程度に収まってるだけ。そう、仮にこれが伝承ならば、この街は滅んだ。消えた。無くなっていた、わけです。

 やれやれ、と一度ため息をつく。スマホの時計は、残り3分だと警告する。

「3分もあれば、十分です」

 今度は、深呼吸をし続きを一人、誰もいないトイレで話し始める。

「今起きてるのは、話題の具現化です。まだ、可愛い噂話で済んでいるぐらいなのです。むしろ、これから過激になるでしょう」

 2つ、噂話だと思いこんでることが問題なのです。そして、また青い鳥で話題になってることも問題です。この二つが揃った瞬間に、噂話をする人は信じることが出来なくなる。

「今の私がこの事をつぶやいても、それは信じられません。むしろ、マジレス乙草と言った返事がくるでしょう」

 嘘、、ネット発端の話、、噂話。と言った数式が成り立つ。これが、今この話をする人の頭にある限り――現状を打破することは出来ない。

 残り1分で、スマートフォンはバイブする。

「くっ、もう少し話したいところですが……仕方ありません。どうせ、次も私ですので」

 スマートフォンの電源を落とし、トイレの外へ出る。

――ところで、これは誰に向けたメッセージでしょうね。

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