第43話 異世界異変

「あれだけ働いてくれたんだ。こいつは奢りだ」

「其れはどうも有り難う御座います―――リーガル、昼飯だ。奢りだってさ」

「お、マジか!あざーっす!」

「頭を下げなくて良いって。まだ昼からの分も残ってるからな、しっかり食いな」


 先の分の運送が終わり、昼も少し過ぎた頃。頃合いでもあると言う事で少しの時間昼休みとなった。そしてその休憩の内に昼食を済ませておこうと思った途端、奢りとばかりに弁当等が入ったコンビニ袋が差し出された。通りで先程何処かへと行った訳である。

 其れを受け取りユーウィスは言葉で、リーガルは態度で礼を返した。


「じゃあ早速…」

「貴方の分は…って、あるみたいっすね」


 袋ごと渡してきたから自分の分は無いのではと思ったが、男性の方を見れば既に弁当を持っているようだった。其れなら遠慮無く頂くとしよう。リーガルは既に食べ始めているが。

 ユーウィスも袋から弁当を一つ取った。よく見てみると袋にはもう一つ弁当が残っていたが、恐らくリーガルが一つでは足りないだろうという気遣いだろう。


「箸しか入ってないが、お前大丈夫か?」

「ん?まあ正直慣れないが、食えない事はない」


 そういうリーガルは当然割り箸を使ってはいるが、掴むと言うよりは刺したり掻き込んだりとどちらかと言えばスプーンやフォークのような使い方をしている。まあ想像通りと言えば想像通りだが。


「にしても、こんな弁当まで売ってるのか此の世界は。軽食ぐらいなら、向こうでも売ってるが、此処までしっかりとした物は中々無いぞ!」

「此れでもまだ偏ってる気がするけどまあ、しっかりしてるな」


 二人が食べている弁当の中身は違っているが、どちらもバランスと言うよりはスタミナ弁当寄りの内容であった。とはいえ此処まで揃って一つになっている食べ物は向こうの世界ではあまり売ってはいないのは確か。店内とかならあるが、持ち運びには適していないものが多い。理由としては、内容と言うより容器の問題だろうな。


「そういえば…さっきの話、何かあったのか?」

「さっき?…ああ、何かがあったらしいな。其れももしかしたら俺たちが関係してるかも知れない事がな」


 弁当を食べ進めながら先程聞いた事故の話へと話題が切り替わった。

 ユーウィスは念の為にリーガルにもその話を聞かせた。とはいえ弁当食べる事に意識の半分以上が向いているのか、自分から訊いておいて、あまり反応を示さないが。


「…こっちの事はあまり知らねえが、確かに妙と言えば妙だな。こっちには魔術の類いは無いんだろう?」

「ああ。代わりに色々と技術が発達してはいるが、原因も前触れも無く急に鉄骨が落ちたり爆発したりという事は手品でも無理だ」


 爆発なら空気中の成分であったり金属の衝突による火花などの多くの偶然が重なれば起こり得ない現象ではないが其れでも可能性は限りなく低い。其れに鉄骨に至ってはそんな大きなものを空中に隠しておく事も急に出現させる事はどう考えても不可能だ。


「となると、お前は向こうの世界からの原因によるものとでも考えてるのか?」

「いや、其処まではっきりしてはいない。だが、俺たちが世界と言う境界を越えた影響が有る可能性は捨てきれない」


 俺たちは膨大な魔力の衝突によって此方の世界へと飛ばされた。あれだけの魔力だ、その際に境界にもダメージが入っていて、其れが今響いていても不思議ではない筈だ。そもそも世界の移動自体想像も付かない現象なのだから此れから何が起こるのかも分からない。


「まあ確かに、あんだけ派手になったんだから通った穴がそのままで残っているってのは有りそうだな。修正力って言うのか?そういうのがどの程度なのか分からんが」

「とはいえ、境界にダメージがある事で空間が揺らいでいる…というのが一つの仮説だが、空間となると物質と違ってどうしても証拠が掴めないんだよな…」

「じゃあどうするんだ?その考えだと一度だけの現象というのも考え辛いぞ。もしかしたら今後も同じような乱れがあるかも知れんぞ」


 確かに、境界が安定しない限りはもう影響が出ないという保証は無い。

 そもそも、世界間の移動によってそうなっていては、元の世界に戻るにしても此の世界に厄介事を残してしまう。其れは避けたいものだ。


 とはいえ、まずは帰還の前に目先の問題だ。

 仮説を証明する意味でも一度その現象を見ておいた方が良いだろう。被害者を出さないようにする意味でも境界の歪みを探す事がこの問題に対する今取れる選択だろう。

 其れに―――


「おーい、そろそろ次に取り掛かるぞ!」


「お呼びだ。行くぞリーガル」

「食うものは食ったし、残りもやりますか」


 袋に入っていた分を平らげ、飲み物で食後の一服を取っていた頃に、男性から昼休み終了の声が掛かった。其れに応えるように二人は食べ終わった分を袋に戻し、近くのゴミ箱へと放る。二人は仕事へと戻る。




 ――其れに、少し気になる事もある。


 事故の際、鉄骨の落下地点には通行人が居たらしい。だが、その通行人は突然の爆発の後には姿を消していた。其れを見た者は死に神だと冗談を言ったようだが、俺の予想が正しければ、その人物が爆発を起こした者だ。


 向こうの世界から此方に来たと思われる者の中で、まだ此方で出会っていない者は残っている。



 アンタはこの世界に飛ばされて何を想う、ラスティア・ヴェル……




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転生召喚師の魔造獣 永遠の中級者 @R0425-B1201

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