第14話 これからのこと

セル撃破から三日後。

ユーウィスは事務所で何もなかったように寛いでいた。


あの後、ユーウィスは魔力を使い果たした影響で一日中眠り続けていたようで、目覚めた時には事件の殆どが終わっていた。

だから後から聞いた話だが、犯人のセルは特殊な道具で魔力を剥奪されて今頃他所の街にある監獄に投獄されているらしい。まぁ人体実験は禁忌なのだから当然か。

奴が潜んでいた場所は封鎖されて道具などは押収されたとか。と言っても、あの場所は戦闘で殆どが破壊されていて何も残っていない気もするが。主に俺たちのせいで。


シンセサイズァーの名は不思議と騎士団や世間に知られていないが、それで良いんだとユーウィスは思っていた。知られるのは時間の問題なのかもしれないが、今は彼女の家に伝わる罪を思い出さなくていいんだ。


そして今回の件の重要人であるハクはというと、前までと同じように事務所に住んでいる。だが、以前とは違い素性が分かったことで、今まで通りというには少々難しい。あれからユーウィスとハクはあまり会話をしていない。と言っても今迄もそこまで会話があったというわけではないので、変わらないと言われれば変わっていない気もする。


事務所にコーヒーにミルクを注ぐだけが響く。

そんな中でユーウィスが口を開く。


「ハク…出て行きたいのなら好きにしていいんだぞ。

俺はお前を生み出した奴と同類だ。俺の召喚術の基礎はシーナから受け継いだもの。つまりはシンセサイズァーの関係者だ。お前が俺と一緒に居る必要はない」


ハクは答えない。


「ある人はこんなことを言っていた。『どうやって生きるかなんてことは、誰も他人に教えられないよ。それは、自分自身で見つけるものだ。』てな。…だから俺はお前に生き方を教える義理もないし、お前は自分の考えで生きていいんだ」


そこまで言うと、無言を貫いていたハクが漸く口を開いた。


「…なら…一緒にいる」

「…お前を実験台にするかもしれないんだぞ」

「貴方はしない。…これは私が自分で考えたこと。…一緒に居たいからいる」


しない、と来たか。

その言葉にユーウィスはため息を吐いた。


「いつか後悔するぞ」

「後悔はしない…だから大丈夫」


そう言ったハクは笑っていた。

その時、事務所の扉が開く。


「ようこそ…ハーモニス事務所へ」


訪問者は女性で仕事の依頼に来たようだ。

ハクは立ち上がり客に応対する。

ハクはこれからもここで生きていくことを決めたようだ。

それならユーウィスは何も言わない。

では、ここから二人で新たな一歩を歩もうか。

これから何が起ころうがなんとかなるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る