第13話再びやってきたこの世界(展開が急でついていけない)

時間は進み、長かった24時間もあっという間に過ぎていった。

時刻は午後1時程、学校も終わり俺たちは昼飯を食べていた。

昼飯は舞雪のお手製海鮮パスタだった。具材はイカやムール貝、海老と、なかなか本格的だった。

味は────


「おいしぃい♥」


小さい声で、と言うか美味すぎて小さい声しか出ないのか、とにかく小さい声で美味いと言いながら目を輝かせパスタを見つめるルミエル。その美味しそーに頬張るルミエルを見て俺も一口頂く。

うむ、美味い。

パスタを口に入れた時に広がるなんとも言えぬ魚介の旨み、そこらに売ってる海鮮パスタの素ではとても出せない味だ。

さすが俺の妹。家事全般を悠々とこなす辺りほんと惚れちゃうよ!

ルミエルもティナベルももくもくと食べ進める舞雪を尊敬する目で見ている。

舞雪もそれに気ずいたか、謙遜するように言う。


「美味しく、なかったですか?」


ぶふぉ!

首を小さく傾げてルミエル達を見る。その表情が可愛すぎて可愛い。もうこの子顔一つで向こうの世界救えるんじゃない?と言うくらいに可愛い。

ルミエル達は首を全力で振り「美味しい!これすっごく美味しいよ!」と何度も言っていた。

例え美味しくなくてもあの笑顔一つでどんな料理も美味しくなるであろう。

このパスタも今の笑顔でさらに美味しくなった気がするもん……うん、気のせいじゃないはずだよ。


「お兄ちゃん」


「ん?」


舞雪は唐突に心配そうな顔をしながら俺を呼ぶ。


「どうした?」


「異世界行ってたのって、本当なんだよね?」


舞雪は真剣そうな、でも少し心配そうな声で聞いてくる。

その質問になんと答えればいいか戸惑ったが、俺は落ち着き、普通に答えた。


「本当だよ」


舞雪は少し硬直し、こちらをじっと見つめた。

少ししてから舞雪はむすっとした顔をして言う。


「やっぱりお母さんウイルスが……」


「やめなさい」


神風琉空手チョップをくらい、舞雪は「いってっ」と可愛く頭を抑える。


「と言うか母さんは?昨日から以内の疑問に思ってたけど言うの忘れてた。」


「あぁ~、お母さん友達と旅行とかで1週間家を開けるらしいですよ?」


舞雪は母さんの書いた置き手紙を「はい」と見せてきた。


「ほんとだ……」


1週間もどこへ行くのだろうか……俺もこれから家を空けるのに母さんまで居ないなんて……舞雪を1人にさせるというのか!?

出来る訳が───


「お兄ちゃん、大丈夫だよ。1人でも」


舞雪は、大丈夫だよ。と、俺を安心させようと、いや、ほんとに大丈夫なのかもしれないけど、安心させようとしてくれている。

舞雪のその優しさを受け取っておこう……だが……


「大丈夫なわけないだろ母さんが帰ってくるまでここにいるよ」


「そこは普通行くところだよね?」


「普通はそうだろうけど俺は違う。妹が心配すぎてやばい、もし置いていくなんてことしたらあっちの兄ちゃん倒すより俺という兄を先に倒しちゃうよ?」


普通だよね?兄が妹の事心配するのは当たり前だよね?


「つーわけで俺はここに残る。2人とも行ってらっしゃい」


「その首切り落とすぞ」


「ごめんなさい行きますすぐ行きます行かせてください」


いや待てよ?こいつらの兄なんだから俺関係ないんじゃね……?ないよな、よし断ろう。断らさせて頂こう。


「なぁ、ティナベ……」


「ちょっと待ってお兄ちゃん!」


と、俺の言葉を遮ったのは舞雪。どうしたのかな?まさかとは思うけど連れてっちゃってとか言わないよね?


「どうぞティナさん!お兄ちゃん連れてっちゃってくださぁい!」


わぁお

驚きだ。小さい時はお兄ちゃんお兄ちゃん付いてきたあの舞雪がぁぁぁぁぁあん?

舞雪との思い出を語ろうと思ったのだが誰かに首根っこを持たれて引きずられていく。


「ありがとう!舞雪ちゃん!できた妹で偉いわね~!じゃあ少しだけお兄ちゃん借りてくけど許してね!」


「はい!どうぞどうぞ!うちの兄くらいならいつでも貸しますよ!と言うかもう上げますよ!ちょっと最近気持ち悪かったし!」


本音漏れてます本音漏れてます。いや本音だと悲しいんだけどね?そんなストレートに気持ち悪いとか言われるとお兄ちゃん悲しいよ?それになんか勝手に行くことになってるけどおれいきたくないよぉぉぉお?


「じゃあお言葉に甘えて神風様は私が頂きますね!」


「はいどうぞ!毎度ありがとうございます!」


「人を商品みたいにいうなぁ!俺は、俺は行かないぞぉ!」


「はいはーい、わかりました分かりましたぁりやぁ!」


「コボァ!」


首根っこを持たれながら暴れる俺の腹を思い切り殴る。

そこまでして、俺をつれてく意味…ありますかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ??????

そのまま俺は意識が薄れ、気絶した。




「ん、んん……」


「あ、起きた」


「神風おはようございます♥」


「ここどこ……」


「ここはソルセア王国の少し手前の草原ですよ★」


そうか、来てしまったのか……またこの世界に……


「神風様、そんなことよりお腹の方は大丈夫ですか?あのバカ本気で神風様に腹パン決めたんですよ?」


「あぁ、腹の方は大丈夫そうだけど精神の方が大丈夫そうじゃ無さそうだ……」


あぁ、舞雪ぃぃ……大丈夫かなぁ1人で大丈夫かなぁ……きっと大丈夫だろうな…俺の妹だもん。うん、超絶心配だけど舞雪を信じよう!それが兄としての使命だ!


「そうか、大丈夫か。じゃあソルセアに入るか」


なかなか厳しいっすねティナベルさん……

まぁいいけども、問題ないけども……今さっき整理できたしね?


「はいよ」


さっきまでパスタ食べてたはずなのにいきなりこんなとこまで来ると展開が急すぎてついていけないよなぁ……

とにかくこれからこいつらの兄と交戦することになるだろうな……ほんと急すぎて困る。


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異世界転生してみました。 烏丸 ノート @oishiishoyu

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