第8話義姉妹の相手はお兄ちゃんだそうです。

俺とルミエルに向けられて放たれた無数の光の槍、普通ならば避けようもないほどの量。

だが、自称最強神も降せる大魔法使い様はこんな槍、もろともしない。


「無・駄♥と何度も言っているでしょう?」


そう、槍がルミエルの前に届くことは無い。


キィン!と、大きな音を立て槍はルミエルのシールドに激突した。

そしてその槍は消滅した。

それと同時に──


「あ、シールド破壊された」


「槍に、シールド破壊の術式を混ぜ込んだ」


「あらぁ、ちょっと高度な魔法が使えるようになりましたかぁ」


余裕振った表情を見せるルミエル。

ほんとに余裕がある人の表情。

一般的に余裕振った表情をすると余裕ではないと思われるがコイツにそんな概念は存在しなさそう。


「ですがただシールドを破壊しただけで有利になったと思わないでもらえますぅ~?シールドとかぁ、複雑な術式埋め込んで作り直せばいいだけの話ですからァ♥」


「破壊、するまで!」


「そんなに魔力使っちゃ死んじゃうよ?ほんとに、まじで、りありー」


「魔力を増やす魔法を使ってるから問題ない、お前を殺れる力は有り余っている」


んん?よく聞き直してみよう。

魔力を増やす魔法。

魔力使ってるから±0じゃね?とか思うけどきっと+の方なのだろう。だけどそのうち無くなるんじゃねーか?

それはそうと、飛べる相手に飛べないルミエル、シールドが破壊できないにしても不利だな…


「おーい、ルミエルー」


「はぁい♥何でございますか神風さまぁ♥」


「飛びたいか?」


「んー、飛べたら楽ですね」


「ん、分かった。何時間くらいいる?」


「小1時間程度あれば有難いです」


「あいよー、じゃあつけるぞー」


「はーい♥」


ティナベルが槍をうち、鎌を振り下ろしているのも全く気にせず俺としゃべっているところがっぉぃぜあねご……

とまぁ、それは置いといて……一応、能力だし……かっこよさそうなネーミングにしよう、よし。


「クリエイティブ!……あ、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語ってあるけどどれがいい?」


「んー、ドイツですかね」


「おっけ」


よくわからない会話をし、俺はルミエルの戦いに有利なものを出す。


「クリエイティブ、フリューゲル《翼》!1時間弱でてこい」


若干かっこよくなったんじゃね?あれかもだけど創造!翼!よりはイケてるだろ?うん。大丈夫。イケてる。

などとふざけてる場合じゃない。ちゃんと羽はルミエルの元に届いたのか──


「おぉ!神風様!これは凄いです!翼生えて来ました!天使です!私天使です!」


「うん、光輪がないから天使ではないね、それより槍飛んできてるから守って?」


と、俺が作った翼を見て喜んでいるルミエルの言葉をバッサリ切り、飛んできた槍を防がせる。

槍を防いでるルミエルの顔を見ると、喜びを共感出来なかったのが気に入らなかったのか「はぁ」と、大きなため息をついていた。

そんなにも凹むことかなぁ、あんまり大したことじゃないと思うんだけどなぁ。

凹みながらもシールドを展開し続けティナベルから距離を置く。

ルミエルは一切攻撃をしていない。

ティナベルを見ると、少しだが息があれ、疲れてきているのが分かる。やはり魔力を復活させる魔法も魔力使うから結局は魔力が無くなるのが少し伸びるってだけなんだな。

ルミエルも魔力が無くなってきているのを感じたのか「そろそろかな」と呟く。


「そろそろ止めないとほんとにぽっくり行っちゃいますよ?」


「だから魔力はあんたと一緒で増えてるんだ……っ?」


ティナベルの魔法陣が崩れ地上へと落下する。

地へと落下するティナベルを見ると気を失っている。

決着は付いた。

と、思われたがもう一度見るとティナベルの足元には──魔法陣が現れていた。


「死ね……死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね汚れ腐った王族共は死ね、苦しみ死ね、もがけ、あがけ、命乞いをし魔女に助けを求め……そして死ね」


何を言っているのか俺には俺には理解出来なかった。

ティナベルとは異なるその声色は、酷くあれもはや人の声と呼べるものではなかった。


「あー、乗っ取られちゃいましたか、だからその辺にしときなさいって言ったのに…」


乗っ取られた。

ルミエルはそう言った。

つまり、ティナベル自身の魔力は尽き、死んだ。だが、魔女の力を埋め込んだ事で無くなった魔力がの物として蘇り、先程とは逆の状態。魔女がティナベルの力を使っている……ことになる、のかな?

とにかくまだ魔女のおかけでティナベルは生きている。


「おい!ルミエル!」


「はぁい♥何でございますかぁ♥」


「ティナベルは、助けられるか?」


少し、怖々とした声できいた。今殺されようとしていても、1度は命を救ってもらった人だ。見殺しには出来ない。


「んー、もう1回魔力ゼロにしちゃえば戻るんじゃないでしょうか?」


「安易な考えだがそれしかなさそうだな……何時間くらいかかる?」


「もう待つのもめんどくさいんで魔力吸っちゃいます。」


ふぁっ、そんな事が出来るなら最初っからそうすれば良かったのに……と思ったがあえて口にはしなかった。苦しめないで倒すことがアイツにとっての優しさだったんだろう。


「それってどれ位で終わる?」


「成功すれば5秒で終わります」


あらまぁお早いこと。ティナベル自体の魔力を無くすのに小1時間かかったのにこいつには5秒だと?あまりにも雑すぎるだろ。

魔女になった瞬間扱いが雑になるなんてこいつもしや……


「お前義姉ちゃんの事好きだろ」


「神風様ァ、それは冗談でもおやめ下さい♥」


「はい……あ、なんか、はい、すんません」


なんで俺は謝っているのだろう。

茶番はこれくらいにしておこう。すっごい睨んでる魔女さんが目の前にいるから……


「死ね……」


思い切りルミエルの方へ向けてかまを振り下ろす。

ふと思う。

魔力があるのになぜ魔法を使わず鎌ばかりを使うのだろうか……その疑問を戦ってる途中のルミエルに問いかける


「なぁ、なんでアイツ鎌しか使ってないの?魔女って魔法使うんじゃないの?」


「あ、確かにそうですね、なんででしょう」


どうやら分からないらしい。

だが、魔女のある一言でこの疑問は解決する。


「鎌振んのたっのしぃぃぃぃい!!!」


目をキラキラさせ、よだれを垂らし、鎌をブンブン降っている。

あぁ、今さっきの死ね死ねはどこへ行ったのか……なんか、もう、魔女の威厳とかどうとかどうでも良さそうだな…

ルミエルはその魔女を真顔で見つめている。すると魔女の方へ手を向け、呆れた顔で呪文を口にする。


「アブソープション」


その呪文を唱えた途端に魔女は白目を剥き地へと落下して行った。

なんか、5秒も無かったんじゃね?と思う。

それよりティナベルはどうなのか、生きてるか?

地面に落下したティナベルの元へと向かう、そこには意識が戻ったティナベルと、ルミエルがいた。


「おーい、大丈夫か───」


「誰の差し金ですか?まぁ大方予想は出来ますけど……」


少し深刻そうな顔を浮かべ2人は会話をしていた。

声を掛けていいのか分からなかったがあんまり深く考えずに2人の会話に入っていった。


「ルミエルお疲れ、ティナベル大丈夫か。ところでなんの話しをしていたんだい?」


デリカシーぜろの俺は深刻そうだろうがなんだろうが会話に入る。だってきになっちゃうじゃん!

するとルミエルは迷いもなくさらっと教えてくれた。


「ありがとうございます神風様ァ♥今のお話はこの義姉アホが誰に言われて私を殺しに来たのかーって話ですよ」


「あ、そうなの?ティナベルの単独行動じゃなかったの?裏に誰かいるんだね」


義姉の事を普通にアホといったぞこいつ……どーでもいいけどね?

それよりルミエルを殺そうとしたのはティナベルじゃなく他の誰かというのがあれだな。問題だ。ルミエルは大方予想は出来ていると言っていた。じゃあさっさとやっちゃいやしょーぜあねごぅ!と、思うがそんな簡単なやれるのであればこんな深刻な顔はしないだろう。

俺がそいつは誰なんだ?と聞こうとするとルミエルの方が先に口を開けた。


「義兄さん、ですね?」


「えぇ、そうよ」


ティナベルは小さい声で、怯えたように、頷き「そう」と答えた。

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