第3話異世界には能力があるらしいよ
ティナベルと歩くこと数時間が経った。
「街って案外遠いのな。」
「ん、まぁ…そうね。」
俺とティナベルは無言のまま黙々と歩き続けやっとこさっとこ街へついた。
「こじんまりした所だな。」
「もうすぐ夜だし皆自分の家や宿へ帰ってるのよ。それと今からギルド行って報酬貰ってくる。そこで待ってて。」
「はい、俺もギルド行きたいです。」
そうだよな、普通そうだよな。連れてってくれるよな?
彼女はというと──はぁ
と大きなため息をついた。
「分かりました。ギルドはすぐそこです。付いてきてください。」
「おっけ。サンキュ」
あっさりオーケーしてくれた。
ギルドに着くやいなやティナベルは窓口?みたいな所にいった。
「ガルバス200頭の討伐、出来ましたよ。報酬下さいな♡」
最後にハートを付けたかのような喋り方……
そう言って報酬を貰いこっちに来た。
「はい。これあげるから今日はここに止まりなさい。私は帰る。じゃ、お疲れ。バイバイ」
「え、いや、ちょ、待って。」
「なに。」
むすぅっとした顔でティナベルは神風を睨みつける。
「えー、俺ここ来たばっかでよく分かんないんだよね…この世界のことを教えてもらえると嬉しい…何て言ってみたりー。」
ティナベルはさらにむすぅっとした顔でこちらを睨む。
「ちっ、この残念で無能で低能な男め、この私がこの世界の事を教えてやろう。」
言い過ぎゃないか?と、言おうと思ったがさらに機嫌をそこねると面倒くさそうなのであえてスルーする。そう、スルーするー……
「この残念で無能で低脳な男にご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします……。」
涙目になりながらお願いする。それを見たティナベルはにこにことしていた。
(Sかよ……)
「うむ、いいだろう。ではまず、人間が持つ『能力』について話そうか。」
「能力……」
「人間は必ず一つ、能力を持って生まれる。ちなみに私の能力は『修復』だ。壊れたものを直せる。あなたは?」
「え、知らねぇよ。」
あぁティナベルがこちらへ向ける目はもう人を見る目ではない…
誰か助けて
「…………あそこ行ってください。能力が分かる能力を持っている人がいます。調べてきてください。」
「あ、はい。」
そう言われて俺は窓口(?)のところへ行く。
異世界らしくなってきた─
と、ドキドキしながら窓口(?)に行く。
「あのーここにこれば『能力』がわかるって言われたんですけど…俺の『能力』わかります?」
「あ、はい能力の確認ですね。分かりました。少々お待ちください。」
そう言うと受付の女の子は何やら箱から取り出した。
「っと、準備ができました。では見ていきます。」
彼女の手元にあったのは……”水晶”だった。
これは能力……なのか、それとも占い的な何か…なのか。
不明だ。
色々考えているうちに鑑定が終わった。彼女は目を丸くし水晶を見つめていた。
「あのー俺の能力分かりました?」
「あっ、はい、分かりました。あなたの能力は……」
ドキドキする。ワクワクする。異世界に来たと感じられる。
神風は謎の高揚感に包まれた。
「『創造』です。」
── 創造、その場に存在しないものを作り出す……だったよな。
「そ、そうっすかありがとうございます」
凄いのか凄くないのかはわかり得ないが、その場に無いものを作れるのはなかなかいいじゃないか。いい能力だ。
早く戻らなければ行けない。遠目で見てもティナベルが睨んでることが分かる。
──はやくしろはやくしろはやくしろ。
なんかブツブツ言ってんな、まぁいいか
「遅い。で、能力は何だったの?」
「ん、あぁ『創造』だったよ。」
──ガタッ──
「な、『創造』ですって?」
「うん創造」
「想像じゃなくて?」
「創造ダネ。てかそれ一緒の発音だぞ。」
「さい……きょうじゃない…。」
ふむ、どうやら『創造』と言う能力は最強らしい。
「お、おおぉ。何かかっこいいじゃねぇか。」
やはり転生された人は異世界へ行くと最強になるらしい。まぁテンプレと言ってもいいのだが。最強と呼ばれるのは嬉しいな。最強……甘美なセリフだ。
「ちょっと何か作ってみてよ。」
「んーどう作るんだ?」
「知らないわよ!なんか、こう出てこい剣!みたいな感じで!ほら!」
むちゃくちゃだな、まぁせっかくの能力なんだから帰る前につかつまで見よう。
「よし、やって見るか!」
「よしきたぁ!」
俺もティナベルももちろんノリノリである。
「すぅー、はぁー、」
ドクドクと興奮する心臓を落ち着かせ、俺は言う。
「創造、剣!」
とたん、手元に光が溢れ出し、その光が集まり、剣になった。
「お、ぉぉぉぉぉお!!!!!!!剣出たぁぁぁぁぁぁあ!」
「剣きたぁぁぁあ!凄い!ほんとに出るんだ!」
これはやばいかもしれない。凄すぎる。それ故に欲をコントロール出来ず溺れるかもしれない。そんなことにならないように。
「でもまぁ封印だな、これは強すぎる。」
「んー、そうねぇ…たまに魔法に振り回されて魔力亡くなってお陀仏する人もいるけど…でも使ってもいいんじゃない?必要最低限のことは。身の危険を感じた時とか。」
「え……魔力って無くなったら死ぬの?てか使ってもいいって言ったけど俺が振り回されることないの?」
「うん死ぬよ。あときっと君は振り回され無いよ。」
爽やかな笑顔でティナベルは「死ぬよ」と告げた。さらっとこんなこと言えるなんて……恐ろしい子。
「ん?振り回されないって、何で?」
「あなたの状態、ほとんど魔力減ってなさそうだしね。」
「え、でも剣作っただけだしそんな減らないんじゃ……」
「能力っていうのは凄い量の魔力を使うの。ほら、彼女を見てみなさい。今にも死にそうな顔してるでしょ?」
そう言われてみると。俺の能力を見つけてくれた彼女は……、口から涎を垂らし、白目を向いていた。
そのあられもない姿を見て神風は思う。
『悪い事……したなぁ…。』
「マジかよ、能力ってやばいんだな。お前も使ったらああなんのか?」
「なる。」
なんのかよ……。
てことは、俺この世界じゃかなり強い方なんじゃ……へっ、異世界さまさまだなぁ!
ピコンッ
懐からピコンッと音が鳴る。忘れていた。ここに連れてきた主犯。『自称神』からである。
「何今の音。」
どうやらこの世界にはケータイは無いらしい。
「これですよ。ケータイって言って俺の世界では誰でも持ってますね。」
そう言って俺は自称神からの通知を見る。
【やぁやぁひっさしぶりー☆(ゝω・)v
異世界生活は慣れたぁ~?君がそうこうしてるうちに24時間経ったよぉ~。『異世界転生』のアプリが自動インストールされてるから見てみなよぉ~(^ω^)】
なが。長文とか読むの嫌になってくるんだけど。
最初の画面に戻りよく見ると、自称神が言った通り、『異世界転生』のアプリが自動インストールされていた。
これで帰れる。
「えっと、ティナベル。今日は色々とサンキュな、家帰れることになったから帰るわ。また会えるといいな。」
「はぁ?なんだあなたは、この世界のこと教えろと言われ教えてあげようとしたら帰るだァ?ふざけるな帰らせんぞ。」
「……てへぺろ☆ではまた会う日まで。」
そう言い残しティナベルの方へ敬礼をし、『異世界転生』のアプリを押した──
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