最後の、四天王

 い灰色のロボットが、島の地下へ移動していく。

 地上では、青いロボットの爆発物の除去じょきょがおこなわれている。

 スラブの本部にある、地下の会議室で話すライゾウたち。

 青い服の、十代後半の女性が姿を見せる。

 椅子へ座るようにうながし、連れてきた人たちは部屋を出た。

「アースのボスと、世界を支配するはずだったのに」

「支配?」

「夢見すぎでしょ。アオ」

 アカとミドリの反応はめていた。

「あら。生きていたの? ボスは知っているのかしら」

「ボスを知っているのか?」

「知らないわよ。おそらく、知っているのはクロだけね」

「一緒に世界を支配? 知らないのに」

 黙っていた短めの髪の少年が、声とともに息を吐き出す。

ひとりで、勝手に思ってただけじゃないか」

 ライゾウは、元四天王同士の会話に口をはさんだ。


「あたしと一緒に、世界を目指さない?」

「ミドリ、こんなに可愛い子だったなんてね」

「きっと、ロボットの操縦技術そうじゅうぎじゅつは、重要になるはず!」

「手も小さいわね」

「ほかに、できることないし、パイロットやろう。アオ」

「いいわよ」

 話の噛み合っていない二人。話はまとまった。

適性てきせいはあるはずだけど、まずは練習してもらうわ」

「トラップ除去任務じょきょにんむを、与えたいところじゃ」

 スミコとネネの適応は早かった。

 ミドリとアオは、グレータンデム改に乗ることになる。


 睦月学園むつきがくえん。五月前半の授業参観。

 生徒たちの母親が多く訪れていて、父親も混ざっている。

「いつもどおりでいいですよ。落ち着いていきましょう」

 担任の若い先生が、優しそうな声を響かせた。

 スミコとネネの保護者はいない。

 トミイチの家族もいなかった。

「実はずっとひとりで。簡単な仕事をしています」

 休み時間。長めの髪の少年は、聞かれる前に答えた。

「凄いやつだ」

 制服姿のライゾウは感心していた。

 キヨカズも加わって、笑顔で話をする三人。

 スミコとネネに話を聞く時間はなく、休憩が終わった。


 放課後。

「言ってなかったっけ? 家族いないの」

「わしは、言った記憶ない」

 教室で二人の話を聞いたライゾウは、頭をなでた。

「何?」

「ん?」

「寂しいのかなーって思ったら、つい」

「僕には、とてもできない」

 キヨカズは素直な感想を述べた。

「ネネとは、家族みたいなものだから、寂しくないわよ」

「スミコは大げさじゃな」


 アースの会議。

 四天王で残っているのはクロだけ。

『初めてじゃないか。この回線を使うのは』

『三人は役に立ってくれました』

 別の人物が話した。画面は白。

『次はおれの番だ。いいな?』

『ええ。私を失望させないでください』

『それで、機体のほうは?』

『改修しておきました。座標ざひょうを送ります』

 その座標ざひょう。海沿いの倉庫の中に、黒い塊があった。

 ロボットを調べる、黒い服の男。

 自爆装置を外したことに、クロは気付いていた。


 休日の午前中。ライゾウは勉強していた。

「うーん」

「ちゃんと、授業受けてた? 説明してあげるわ」

 可愛らしい服のスミコが、説明を始めた。

 十六夜島いざよいとうの地下。会議室で個別指導を受ける、体つきのいい少年。

 同じクラスの少年少女たちは、すでに勉強を終えていた。

「もうちょっと、くつろげる部屋、ないのか?」

「くつろいだら勉強できないでしょ」

 外ハネヘアが揺れた。スミコは容赦ようしゃない。


 情報端末じょうほうたんまつにメッセージが届く。

 敵が現れた。

 約10メートルの全長をほこる、黒いロボットが接近中。

「全員、持ち場について」

「勉強の邪魔じゃまをしやがって」

「そんな言葉を聞く日がくるとはの」

「同感」

 発進するダブルエス。い灰色が地上に出た。

 球形の空間。コックピットに立つライゾウとキヨカズは、構える。

 細いフレームの黒いロボットが、動きを止めた。


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