霹靂! サンノカタ

 睦月学園むつきがくえん。四月最後の日の、実力テスト。

 トミイチはトップの成績。

 自慢しなかった。褒められると、すこし困ったような顔をしていた。

 ライゾウは落ち込んでいる。なぐさめるスミコ。

 あれから、敵の襲来はない。

 ブルータンデムはすでに直っている。

 そして、五月になる。


 グレータンデムは改修かいしゅうされた。

 装甲そうこうのデザインがシャープに洗練せんれんされ、各部も強化された。

 パイロットはいない。

 かたくなに断るトミイチ。

 ライゾウとキヨカズは、地上でダブルエスの操縦そうじゅうを練習している。

「いまさらだけどさ、タンデムに動力炉どうりょくろないよな?」

『うん』

「そういえば。どういう仕掛け?」

『簡単に言うと、ダブルエスのエネルギーを飛ばしているのじゃ』

 そのあと、ネネが簡単ではない説明を始めて、スミコが止めた。

 練習に戻ったライゾウは、変形合体のかけ声を要求した。

 乗り気ではないキヨカズ。

『いいと思いますよ。意志の力が強まるなら』

 通信でトミイチが言った。


 休日。久々に敵が現れた。

 ライゾウと同じクラスの少年少女たちは、カフェで勉強会の最中。

 島に襲いくる青いロボット。

 四天王のアオは、トラップを使った戦いを仕掛けてきた。

「島で遊べるように、できないのか」

「地上に作っても、壊されちゃうでしょ」

 地下トンネルを走る列車の中で、雑談する二人。

「それより、トラップの場所を覚えないと」

「頼んだぞ」

 やる気にあふれているキヨカズと、やる気のないネネ。

 オペレーターの少女たちは、情報の精査せいさに抜かりがない。

 タカシとミツルも、できることを協力する。


「危険だから、出撃はダブルエスだけ」

「おう。いってくるぜ」

「了解」

 格納庫で巨大ロボットに向かう、二人の少年。

 スミコたちは指令室に移動した。

『青いロボットのほかに、敵影なし』

『分かっているトラップの場所、送った』

 おさげのフユと、内巻きの髪型のホノカが通信した。

『ボクたちも手伝う』

『無理するなよ』

 タカシとミツルが、ホノカに近付いて言った。

「ありがとな。いくぜ!」

「いきます」

 コックピットの二人は、スイッチの付いた棒を握っている。

 エレベーターで昇っていく、い灰色のロボット。


 地上に出たダブルエスは、攻撃されなかった。

 ミドルヘアのメバエから通信が入る。

装甲そうこうに隠されて、敵の武装ぶそうが分からない』

『頭を使ってきたようじゃな』

 ネネは感心していた。

「こうなったら、片っ端からトラップを破壊して――」

「それが狙いかもしれない。まずは、敵に集中しよう」

 ダブルエスのほうが人型に近く、一回り大きい。

 複雑な装甲そうこうの青いロボットは何もせず、2機のにらいが続く。


投降とうこうしろ」

 コックピットのライゾウが言った。キヨカズも続く。

機密保持きみつほじのための自爆装置は、知っているでしょう?」

 敵と通信をおこなっている。

 しかし、返事がない。

「ロボットの名前、なんだ? 教えてくれよ」

『サンノカタ』

 アオの声が聞こえた直後、サンノカタは一気に迫ってきた。

 ライゾウの目線が低くなる。

 その上を横に通り過ぎた、光るやいば

 ダブルエスは、上半身と下半身に別れている。

 分離でやり過ごしていた。空中に浮かぶ上半身。

「キヨカズ!」

「ごめん。掛け声、忘れた」

「身代わりになったかと思ったぞ。びっくりさせるな」

 ライゾウは怒りながらも敵を警戒し、すきがない。分離中も攻撃可能。

『あら、残念』

 再び合体するダブルエス。

 目の光が強まる。

 そのとき、コックピットに文字が表示された。

「なんだ? 新しい力?」

「戦いの中で目覚める心」

「説明はあとでいい。あいつを助ける力があるなら、よこせ!」

 ライゾウが思いをぶつける。キヨカズとともに。

 ダブルエスは、両腕の装甲そうこうが変化していく。角張かくばった見た目になった。

安全装置あんぜんそうち解除かいじょ

「頼むぜ! ダブルエス」

 青いロボットの右腕を左手でつかむ、い灰色のロボット。

『腕をくれるなんて、優しいじゃない』

 サンノカタの装甲そうこうが開き、みっつの光るやいばが迫る。左肩で火花を散らした。

 かまわず、右手を胸部に当てる巨人。

 紙を切るような音がひびく。

 コックピットの周りがくり抜かれ、青い本体からゆっくりと分離していく。

 アオが地上に降ろされ、サンノカタは戦闘能力せんとうのうりょくを失った。


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