任務と、意思

 くずちる赤いロボット。目の光が消える。

 赤い服のパイロットは投降とうこうした。

 武器を持っていなかった。

 スミコたちの組織そしき、スラブは軍隊ではない。懲罰房ちょうばつぼうはない。

 地下の会議室に集まる、主要メンバー。

 いっぽうで、地上のエンジニアたちが、巨大な赤いロボットを回収していく。

 くせのある髪の男が部屋に入ると、白衣の人物がじっと見た。

「アカはフユの兄じゃろう。生物学的に」


「妹が病気で、金が必要だった」

「なに? 今から、どうにかして金貰おうぜ」

「ちょっと、ライゾウ」

 キヨカズは顔をしかめた。

「確認してみてよ」

 スミコが、十代後半の男性に言う。

 両手は自由に使える。持ち物は没収していない。

 パイロットは、おとなしく従うように見えた。だが、手が止まる。

「わしに貸すのじゃ」

 情報端末じょうほうたんまつを奪い取ったネネも、動きを止めた。

 眉を下げたライゾウがのぞきこむ。

 入金されていた。

「使い捨てにするのが、あく組織そしきだと思ってたぜ」

任務にんむに失敗したのに」

 考え込むキヨカズは、思いを伝えるべきか迷っていた。


餞別代せんべつがわりのお金かもしれない」

「なら、もう、あく組織そしきに従う必要はないな」

 二人の少年は、対照的な表情をしていた。

 スミコの情報端末じょうほうたんまつにデータが届く。確認の途中で、少女が口の端を上げる。

「エンジニアとして働きなさい。アカ」

「爆弾を解体かいたいするとは、やるではないか。異論なし」

 誰も反対しなかった。

 アカは、ひとみうるませた。


「アースの人間とは、暗号通信あんごうつうしんでやり取りしていた」

「ロボットを受け取るときも?」

「会ってないんだ」

「どうせ、四人ともコードネームでしょうね」

「ほかは知らないが、自分は本名だ」

 アカがさらりと言った。

「なんだよ。アースは形から入る組織そしきなのか?」

「なんで、わしのほうを見るのじゃ」


 地下の通路から出てくる、四人とアカ。

 待ち構えていた五人に見つかった。ライゾウの同級生たちだ。

「なんで、お兄ちゃんがいるの?」

「エンジニアとして、頼りになる存在よ」

 即座に、笑顔で答えたスミコ。

「そう。今日は、特別ボーナスが」

「キヨカズ! それは、言っちゃダメなやつだろ」

「え? そんな話、あったっけ?」

 銀髪の少女は表情を変えない。外ハネヘアの少女が白い歯を見せる。

「とにかく。今日は遅いから、また明日、ゆっくり話すわ」

「それがいいじゃろう」

 足早に去っていく二人。

 アカは何も言わず、優しい顔でフユを見ている。

「明日はのんびりしようぜ。みんなで」

 伸びをしながらライゾウが言った。それぞれが帰路につく。


 翌朝。

 休日を利用して、まずはライゾウたち四人が集まった。

 普段着で駅前にいる。

 しかし、ダブルデートではない。

 少年少女たちのもとに、クラスの数名がやってくる。

 タカシとミツル。フユとメバエとホノカ。

 続いて、長めの髪の人物があらわれた。


「俺が呼んだ。戦力になるぜ、トミイチは」

 挨拶あいさつわす同級生たち。

 詳しい話をするため、ライゾウたちは移動する。

 やってきたのは、駅近くの大きな公園。

 人影はまばら。

 なぜなら、すでに桜がほとんど散っているからだ。緑の葉が影を差す。

 十人で、まるいテーブルを囲んで座った。

 少年少女たちに説明する、島の持ち主、スミコ。

「――というわけで、四天王の一人を倒したの」

 それがアカだとは言わなかった。

「なんで、お前が、自慢げなんだよ」

「そういうこと、言わない」

 キヨカズが間髪入れずに言った。

 小柄こがらな少女は、暇そうにしている。


 話が、グレータンデムの運用に移る。

 説明する機会がやってきたネネは、きとしていた。

 専門的せんもんてきな技術を語り出して、三人から止められる。

「ロボットのパイロットが、足りないのよ」

「オペレーターもじゃ。わしには向いてない」

 そのとき、二人の手があげられる。

「ボク、やりたい」

「オレも」

 短髪のタカシと、坊主頭のミツルだった。


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