第二章 ガーディアン

陽光! イチノメ

 睦月学園むつきがくえんのオリエンテーションは、昨日まで。

 通常の授業が始まった。

 そして昼休憩。食後で眠そうなネネがメッセージを受ける。

「直ったようじゃ」

「ちょっと。見せびらかさないで」

 スミコが注意した。情報端末じょうほうたんまつをしまう。

 男子がちらりと見て、長めの髪がゆれる。何も言わず読書に戻った。

 教室内では使用が禁止されているためだ。

 スラブのメンバーが持つ暗号通信可能あんごうつうしんかのう端末たんまつは、その限りではない。

追加武装ついかぶそうは?」

「言うと思った」

 ライゾウの言葉を、キヨカズは予想していた。

 あれこれ話したあと、歯磨きに向かう四人。


 放課後。

 レーダーが敵をとらえた。南から十六夜島いざよいとうに接近中。

 巨大な赤いロボット。

 四天王のアカが乗っている。


「学校が山の上じゃなくて、よかったぜ」

 ブレザー姿の四人は、海に向かい歩道をける。

 街路樹がいろじゅから伸びる影をくぐりぬけ、地下への通路を目指していた。

「走るのは苦手じゃ」

 おくれている少女は、スカートよりも銀髪を大きく揺らす。

 地下への入り口で、三人が待っている。すこしあとに、閉じる入り口。

 その様子を、二人の男子生徒と、三人の女子生徒が見ていた。


「タイミング良すぎでしょ」

 外ハネヘアの少女は、不機嫌そうな顔で言った。

 島へ向かう地下の列車内。

(こっちの情報が知られているのか?)

 キヨカズは口に出さなかった。ネネの視線に、ぎこちない笑顔を返す。

 島に着き、それぞれの持ち場につく。

「分からないことは、あいつを倒して聞き出してやる」

 コックピットで決意を口にするライゾウ。

 ななめ上の座席に座るキヨカズは、武装ぶそうの確認に余念よねんがない。

『説明はもういいかの』

『発進!』

 指令室しれいしつからの通信を受け、エンジニアたちが動いた。

 グレータンデムが足場ごと移動。エレベーターで地上へと上がっていく。

 角張った灰色のロボットは、敵と対峙たいじする。


 鋭角えいかくな赤いロボットから通信はない。

 西からの光をあび、広い道路の上で向かい合う、二体の巨人。

 どちらも2階建ての建物より背が高い。

 島に人が住んでいないため、ダミーの建物はまばらに建つ。

「攻撃するときは言ってくれ」

「了解」

 ライゾウの意志に、キヨカズがこたえる。

 全面ディスプレイにうつる敵のロボット。イチノメは、距離を詰めてきた。

「肩」

 キヨカズが言ってすぐ、グレータンデムの動きが止まった。

 右肩に装備された2連シーイーキャノンが光を放つ。

 イチノメの左肩に命中。銃口を破壊した。

「背中」

 バランスを崩した相手に、すかさず攻撃が続く。

 背中の、中距離シーイーキャノンから発射されるたま

 赤いロボットの右肩に当たった。

 初戦とは違い、ライゾウとキヨカズには余裕が見える。

 そして、アカは迷っていた。


 アカが回想するのは、アース四天王の会議。

 通信でおこなわれ、実際に会っていない。

 顔は不明。画面には、それぞれのロボットが表示されている。

『ちゃんとやってよ。次は』

『ミドリは手厳しいのね』

『そうでもないぞ、アオ』

 アカは何も言わず、クロの次の言葉を待った。

『失敗すれば、次はない』

『はい』


 赤いロボットの動きが鈍った。

 ライゾウは通信を試みる。

「倒したら爆発するんだろ! さっさと降参こうさんしろ」

『自分で解除した』

「そんなことが、できるのか?」

 近接武器きんせつぶき安全装置あんぜんそうちを解除しない、キヨカズ。

 イチノメは、右手に光るやいばを発生させた。

 攻撃できないライゾウ。シールドでやりすごす。

「このままじゃ、やられる。あいつじゃなくて、俺を信じろ!」

 グレータンデムは後退している。

 徐々に接近されていくさなか、右手の棒に光がともった。

「左」

「ここだ!」

 光るたてやいばを防ぎ、けんやいばの根元に突き立てた。

 やいばが消える。

『まだだ!』

 左手を振りかざすイチノメ。光るやいばが発生していく。

 グレータンデムは、右手のたてで防ぐと、左手を構えた。

 光るけんやいばと交差する。

 コックピットの二人は、真剣な表情で前を向いたまま。

 横向きの操縦桿そうじゅうかんを握りしめている。

 爆発はしなかった。イチノメは、全ての武装ぶそうを失った。


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