修理と、平穏

 格納庫かくのうこ。修理を受けているグレータンデム。

 見守る二人の少年に、二人の少女が近付いてきた。

 さらに、ヘルメットをかぶった年配男性ねんぱいだんせいもやってくる。

博士はかせ。こいつは、ちょいと時間かかりますよ」

「数日かの?」

「三日でなんとかします」

「チーフもみんなも、無理だけはしないでね」

「コウシロウの腕の見せどころじゃ」

 スミコとネネの言葉に、整備班せいびはんの人たちは歓声を上げた。

 ライゾウとキヨカズは、何も言わず頭を下げた。


 指令室しれいしつは、なごやかな雰囲気とは程遠い。

「ほかのロボットはないのか?」

 短めの髪の少年が、椅子へ座らずリーダーに詰め寄った。

 眉を下げる、外ハネヘアの少女。

「あるけど、動かせない」

「タンデムのコアは量産できん。ほかにパイロットもいない現状では――」

 まだ何かを言おうとしている銀髪の少女。

 そこに、普通の髪の少年が口をはさむ。

「パイロットがいれば、動かせる?」

 キヨカズの言葉で、ライゾウの表情が明るくなった。


 翌日。島が見える場所にある、睦月学園むつきがくえん

 授業はなく、オリエンテーションをしていた。

 簡単なテストを受け、頭を悩ませる制服姿のライゾウ。

 キヨカズとスミコとネネは、普通にいていた。

 お昼前。

 下校の時刻になると、ライゾウが突然叫ぶ。

「疲れたよな、みんな! 着替えたら、ゲーセンで遊ぼうぜ!」

「僕も行く」

「わたしも!」

 すぐに反応したキヨカズとスミコ。

「え? わしも?」

 三人に見つめられ、ネネも言葉をはっした。

「私は、行けませんが、皆さん、くれぐれも粗相そそうのないように――」

 教室が騒がしくなる。途中でかき消されてしまった、担任の先生の声。

 やさしそうな笑顔が生徒たちに向けられた。


 放課後。それぞれの食事のあと。

 ライゾウのクラスの生徒ほとんどが、ゲームセンターにいた。

 二つある筐体きょうたいで、タンデムをプレイしている。

 みんな、いい成績を残せない。あごに手を触れるキヨカズ。

「そう簡単には、いかないか」

適性てきせいがどうとかって話、本当だったんだな」

 ライゾウは渋い顔。最初にお手本と称してプレイした二人が見守る。

 小声で話していた。

「どうやったら、キミたちみたいにできるの?」

「オレにも教えてくれよ」

 控えめな短髪の少年と、気が強そうな坊主頭の少年が言った。


「やはり、難しいの」

「なんでわたしに適性てきせいがないのよ」

 プレイを終えたネネとスミコは、雑談していた。ネネの服は地味だ。

 まるい机に向かい、椅子に座っている。

「ここ、座ってもいい?」

「いいよ」

 断る理由はない。ここはフリースペース。

 ミドルヘアでメガネの少女に続いて、別の少女たちも言う。

「アタシも」

「ホノカも」

 三人の少女が椅子に座り、五人でまるい机を囲んだ。

 甘い香りがする中、話に花が咲く。

「なんでゲームするの? 気になる男子がいるの?」

 おさげの少女の質問。二人は、あいまいな答えを返す。


 次の日。

 2回目のオリエンテーションがおこなわれた、睦月学園むつきがくえん

 実際の授業に近い3教科を受けて、ライゾウは疲れていた。

 グレータンデムは、まだ直っていない。外は雨。

 敵は攻めてこない。


 ひんやりとした放課後。

 ライゾウとキヨカズは、普段着でゲームセンターにいた。

 可愛らしい服のスミコと、地味な服のネネもいる。

「こんにちは。会えるとは思いませんでした」

 タンデムをプレイ中の二人に、フォーマルな少年が挨拶あいさつした。

「よう。トミイチ」

「こんにちは」

 挨拶あいさつを返した少年たちに続いて、少女たちも挨拶した。

 ゲームでは、敵のロボットが現れる。

「どうにか、爆発させずに倒せねえかな。こいつ」

「武器を的確に狙うのはどうでしょう? 確か仕様しようでは――」

「やってみるか!」

 トミイチの言葉を最後まで聞かず、ライゾウは叫んだ。


「やってるね」

 短髪のタカシと、坊主頭のミツルがやってきた。

「こんにちは」

 おさげのフユと、メガネのメバエに、内巻きの髪型のホノカもやってきた。

「ちゃんと食ってるか? 無理せず座っとけよ」

「ありがとう」

 ライゾウに言われて恥ずかしそうにする、せぎみのフユ。

 全員でフリースペースに向かい、つかの間の休息を楽しんだ。


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