出現! 四天王

 入学式のあと。

 自宅へ戻り、普段着に着替える少年。

 昼食を済ませて30分が過ぎる。歯磨きをすると、外出した。

 十代半ばの少年二人は、ゲームセンターにいた。

 タンデムをプレイ中。複座ふくざせき

 じつは、ロボットの操作に慣れる訓練くんれんである。

「マニュアル操作って、しんどいんだな。知らなかったぜ、キヨカズ」

「ライゾウの担当は、恩恵が大きいから」

 二人は、思考操作について話していた。

 スミコとネネから喋るなと言われていたので、言葉をにごしている。

 その様子を、少年が見ていた。


「二人とも、見事な腕前ですね」

「照れるな」

「すぐ調子に乗るから、気を付けたほうがいい」

 二人を見て、表情をゆるめた少年。すこし長い髪を揺らす。

「いつも、練習しているのですか?」

「そんな丁寧ていねいな話しかたじゃなくて、いいぜ」

「私は普段からこうなので、気にしないでください」

 普段着だというのにフォーマルに見える少年は、表情を変えなかった。

「同じクラスなんだから。仲良くしよう、トミイチ」

 キヨカズの言葉でライゾウが気付く。照れ笑いした。

 つられて、三人で笑った。


 ライゾウとトミイチは、ゲームをした。

 トミイチとキヨカズもゲームをして、相性の良さを見せる。

「やるじゃん。トミイチ」

「二人を見ていたので、真似まねしました」

真似まねでここまで……あ。用事だ、ライゾウ」

 キヨカズが情報端末じょうほうたんまつを握る。ライゾウも見る。

 敵がきた。

「えーっと、悪い。急用だ」

「ごめん。また遊ぼう」

 手を振り、二人はその場をあとにする。

 トミイチは、すこし寂しそうな顔で見送った。


 箱型とは違う敵が襲ってきた。

 赤いロボット。

 二人は、スラブ専用の入り口に向かう。情報端末じょうほうたんまつをかざし、ドアが開く。

 エレベーターで地下へ。トンネルを通って島に移動する。専用の列車を使った。

 格納庫でグレータンデムへと乗り込み、エレベーターで地上に出る。

「格好いい見た目しやがって」

 ライゾウは悔しがっていた。コックピットで、横向きの操縦桿そうじゅうかんをにぎる。

 敵が映る全面ディスプレイ。

 二体のロボットは、どちらも全長が約10メートル。

 だが、赤いほうはフレームが細い。洗練せんれんされた見た目をしている。


「通信?」

「あいつからだ」

 指令室しれいしつに許可を取らず、ライゾウは通信を受けた。

『自分は、四天王のアカという者だ』

『あたしはここにいないけど、ミドリ』

『わたくし、アオですわ』

『おれは、クロ。よろしく頼むぜ』

 お互いに攻撃しない。指令室しれいしつのスミコとネネは黙っていた。

 キヨカズも黙っている。

(わざわざ、四人いると教えてくれる理由は何だ?)

『おれたちは、アースという組織そしきぞくしている』

「なんだ。あんまり強そうじゃないな」

『名前で判断するわけ?』

 スミコは思わずツッコミを入れた。


『用件は以上だ。戦闘開始!』

 クロが叫ぶ。

『イチノメ、参る』

 アカが言ったあと、通信が切れた。赤いロボットが動く。

 右腕の装甲そうこうに仕込まれた武器が起動し、現れたのは光るやいば

 グレータンデムも、腰の武器を手にする。しかし、遅かった。

 かろうじて、左腕のシーイーシールドで攻撃を防ぐ。

 距離を取ろうとするライゾウ。

 赤く鋭利えいりなイチノメは、さらに踏み込んでくる。

 やいばけんはぶつからなかった。

 灰色のロボットは、右手を失った。

「……っ!」

 ライゾウは声にならない叫びをあげ、とっさにシールドをぶつけた。

 光るやいばが発生している場所の近くに命中。次の瞬間、爆発した。

 お互いにダメージを受ける。

「無茶しすぎだ、ライゾウ」

 キヨカズの言葉に対し、返事はなかった。

 赤いロボットが動きを止め、後退する。二人は黙って見つめるのみ。

 華麗かれいに木々をよけて撤退てったいした、四天王のアカ。


 なぜか敵は、すぐに襲ってこない。

「あと三人いるんだろ? なんでだ」

『予告と、メカのデータを送りつけた連中だし』

『データから、いたずらではないと判断したのじゃ』

 ライゾウの疑問は解消しなかった。空を舞う鳥を見ようとしない。

『無事でよかった』

『やられたな、少年』

 ネネは感慨深かんがいぶかそうに、どこか嬉しそうに告げた。

「対策を考えないと」

 キヨカズは前を見ていた。思いを口には出さずに。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る