鉄壁! グレータンデム

 ロボットは全長、約10メートル。

 二人の少年は、胸の奥のコックピットに座っている。

 ふたつ、縦に座席がある。まっすぐ上下に並んではいない。

 横から見ると斜めに配置されていた。

 下にライゾウ、斜め上にキヨカズ。横向きの操縦桿そうじゅうかんを握る。

 窓はない。ディスプレイが敷き詰められていて、全面が外の風景。

 スミコから通信が入る。

『サポートは任せて』

「勝手に立ち上がったぞ。どうなってるんだ?」

「それも気になるけど、歩いたら気を失うほどの衝撃がありそう」

「弱気だな、キヨカズ。気合いでなんとか」

重力制御じゅうりょくせいぎょで、ある程度の衝撃は無効化できるから、早く行くのじゃ』

 ネネの言葉にすぐ反応するライゾウ。

「ひょっとして、飛べる?」

『そんな重いものが、飛べるわけないでしょ』

『ホバー移動はできる! 海へ進むのじゃ』

 倉庫の壁を跳び越えても、揺れを感じないコックピット。臭いもない。

 グレータンデムは海へ向かう。


 海上をホバー移動する巨大ロボット。

 背中や脚など、各部にあるスラスターが作動している。

 ライゾウは感激していた。

 キヨカズは操作方法を聞いている。

安全装置あんぜんそうちの解除は、思うだけで可能。攻撃は自分で操作すること』

 ゲームセンターの操作は緊急時のもので、基本は思考によるコントロール。

(意志の力が必要って、こういうことか)

 キヨカズは思いを口に出さなかった。

「もうすぐ島だぞ。武器はどうなってるんだ?」

『シーイー兵器よ』

実弾じつだんを使わず、圧縮したエネルギーに、物質ぶっしつと同じような特性を持たせて――』

 ネネの言葉を遮り、ライゾウが叫ぶ。

「呼びにくいから、ビームでいいだろ!」

『全然、違うでしょ。あんた、話聞いてた?』

 倉庫から通信中のスミコは呆れていた。


 ロボットが島に着く。敵の姿が、遠くに見えた。

 島は円に近い形。周囲、約15キロメートル。

 背の高くない建物が、まばらに並んでいる。木々はさらに小さい。

「建物を壊さないように勝つのは、難易度高なんいどたかいぞ」

『ある程度は仕方ないわ。許す』

 上から目線のスミコに、ライゾウがすぐ言葉を返す。

「お前が良くても、住んでる人は良くないだろ」

『人いないし、私の島だから』

『グレータンデムの関係者は、地下じゃ』

 ライゾウは黙った。

「建物は、敵の目をあざむくため?」

 キヨカズは適応が早い。

 視覚情報しかくじょうほうとして、敵の位置が伝えられる。


「敵のメカ、人は乗ってないんだろうな?」

生体反応せいたいはんのうなし』

『シーイー弾は、人に当たっても致命傷ちめいしょうにはならないわ』

 ネネとスミコの言葉を聞いても、ライゾウの表情は曇ったまま。

 巨大ロボットは、まばらに建つ建物をよけながら歩く。

 キヨカズは、武器の安全装置あんぜんそうちを解除した。


 島の持ち主の少女スミコと、ロボット博士のネネ。

 対岸の倉庫から、状況確認じょうきょうかくにんと指示をしている。

 島では、グレータンデムが敵に発見されていた。

 キヨカズが言う。

「いつでもいける」

 空を飛ぶ四角い箱型のメカは、銃を使わなかった。四角いものを地上に投下した。

 大きさは、5メートルほど。

 地面に落ちると、変形して四足歩行するメカとなった。銃口が見える。

 遠くでも同じように投下されはじめる。拡大され、ディスプレイに映った。

「悩むのはあとだ」

 ライゾウが左右それぞれの手に力を入れ、横向きの操縦桿そうじゅうかんを握りしめる。

 脚から銃を取り出し、右手で持つグレータンデム。

 あしもとの木と比べると、巨大ロボットが構えているのは、人の何倍もある大型の銃。

 右手のスイッチを押す。光のたまが飛んでいき、命中。空中で四角い箱が爆発した。

 ドカーンと派手な音がこだまする中、通信が入る。

『おそらく、爆発は機密保持きみつほじのためじゃ』

爆弾ばくだんじゃねえか!」

 心からの叫び。憤慨ふんがいしながら、飛んでいるメカを次々と落とすライゾウ。

 接近する地上のメカも、ついでに撃ち抜く。

『空中、終わり』

 スミコの声には緊張感がなかった。


「武器を試そうか」

「遅いな、この箱」

 キヨカズの判断は的確で、ライゾウもすでに慣れていた。

 グレータンデムは、大型の銃を太もも部分にしまう。

 腰から短い棒を取り出し、右手に持った。

 光るけんが現れ、描かれた軌跡きせきが地上のメカを両断する。

「いちいち爆発するなよ」

 ぼやきながら敵をさばくライゾウ。

「左」

「丁度いいぜ」

 巨大ロボットの左腕に現れたのは、光るたて

 難なく攻撃を防ぐと、すぐにシーイーソードで撃破した。

 まるでゲームのようだ。

 違うのは、爆発が派手だということ。

 その爆発を起こしたのが、最後の敵だった。


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