第105話 三日目の顛末です2

「さっきの二人組で前に取りに来てねー。」


テレージア先生は台車の前でそう言って、

みんなに魔道具を配っていく。

二人組っていうとギームとなのか。

でも、僕は魔道具使えないけどいいの?

そう思いつつ先生を見る。

先生は目を少し大きくして、ハッとした表情を作ると


「あっ、ごめんね。ギーム君はアデク君と組んでね。

アヤト君は一応私とよー。」


と言った。

なるほどなるほど、ちゃんと魔道具を使える人同士で組みましょうってことね。はいはい。

……うぐっ。先生、生徒の心にダメージを与えるのは良くないと思います。

やはり、もやっとした気分を抱えながらも先生のもとに向かう。

その途中、アデクとすれ違ったところでクスクスと笑われる。


「おっ?先生と組むのか。

流石、魔法学者さんのところのお坊ちゃんだなー。

え?違う?

あっ、そうだった。坊ちゃんは魔力が無くて

魔法が使えないんだったー。」


あはははー。


そんな笑い声が上級生の中から聞こえてくる。


「コラッ、やめなさい。」


先生の注意がとぶが、それでも笑い声は続いていた。

ギリッと歯ぎしりをしながら耐えていると、


「「笑うなっ。」」


大声が校庭に響き渡った。

ルーシェちゃんと……ミリアちゃん?

あの恥ずかしがり屋の?

あり得ないものを聞いたような気がして振り向くと、

冷たい目でアデクを見るルーシェちゃんがいて、

その横でミリアちゃんがその紅い双眸でアデクを睨んでいた。

呆気に取られていると、


「なんだ、なんか文句あるのか。」


アデクが言い返し、一触即発の雰囲気となる。

そこで、先生が手を叩き、


「はい、授業を始めるからみんな落ち着いて。」


と言うも、睨み合いは収まらない。

そんな険悪な空気の中、生活の授業――今日は魔道具の使い方について――が始まったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日の生活の授業は

魔道具、魔法の使用についての条例、法律から始まって、

魔道具の使い方、使うときの注意点、

故障かな?と思ったらなど魔道具のことを聞き、

また、渡された魔道具を実際に使用してみるという授業だった。

最後のには参加できなかったのが残念だったが。

その授業が終わった後、僕はアデクに呼び出しを受けていた。


「おい、二アワ後に、校舎裏に来い。

来なかったら分かってるな。」


そしてその呼び出しから三アワ、僕は指定された校舎裏にいるのだった。

一アワも待ってるけど、もう帰っていいかなぁ?

何故無視しなかった上に、わざわざちゃんと待ってるのかって?

それは、アデクが「分かってるな。」って言ったとき、

僕の頭にはアデクがやりそうな面倒くさいことが十、二十浮かんでたからだよ。

後でそんなことになるよりは今ここに来て、待っておいたほうが楽だろう。

そんな一人語りを脳内で繰り広げていると


「よお、アヤト。」


「遅かったね、アデク。」


指定の時間から大きく遅れて、アデクとその取り巻きが現れたのだった。

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