第104話 三日目の顛末です1

三日目


「今日は体育と生活学よー。」


朝の会でテレージア先生は言う。

それに「え~」と不満の声を上げる上級生達。

どちらも面白そうなのにどうしてそんな声を?

と疑問に思い、校長の息子なら何か知ってるかなと隣のビートに聞いてみる。


「あー、特に体育は人気が無いって聞いたよ。

体力づくりのために延々と走ったり、集団行動の練習をしたりするみたいだな。」


うえー。確かに面倒くさそうだ。

そんな話をしていると、朝の会が終わったようだ。


「じゃあみんな、校庭に集まってねー。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「体を前に倒してー。はい、いっちにーさんしー。」


ごーろーくしーちはーち。


「今度は腰に手を当ててー。はい、……」


……


つ…つまらん。

という感想が浮かぶのも当たり前。

今やっているのは、準備体操……だと思うのだが、

「これから先生がする動きを真似していってねー。」

の言葉とともに始めてから、かれこれ三十ミニ程続いているのだ。

まさか授業中ずっとこれをやり続けるんじゃあないだろうな……


そんな心の声を聞き取ったように、先生が言う。


「はい、じゃあ次は二人組を作ってー。」


ようやくこの退屈な準備体操が終わるのか。

安堵と、

うっ、二人組……昔の記憶が……

心の痛みを感じていると、

ギームがやってきた。

珍しく積極的なギームと組むと、

隣にアデクを連れた先生が言った。


「はい、今度は二人組で先生たちの動きをなぞっていってね。」


そうして始めたのは――


体操の時間は授業の最後まで続いたのであった……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の生活の授業もここでやるからね、と言って校舎に向かった先生を見送り、

僕たちは固まって雑談を始めた。


「それにしても、さっきの体育つまんなかったよな。」


「うん、最後に怪我を防ぐために体を動かす前にはあの体操をやってって言われたけど、

無駄が多すぎだと思う。」


「そうなのか?アヤト。」


「うん、例えば最初の方のこの動きと、真ん中ぐらいでやったこの動きは全く同じところを伸ばしてるし、そもそも、時間が長すぎてせっかく伸ばした筋肉が固まっちゃうよ。」


アレフにそう説明すると、


「へえ、そうなのか。」


と納得した模様。

そこに、後ろからビートが聞いてくる。


「ふーん、そういえばアヤトはどこでそんな知識を仕入れているんだ?」


「えぅ?

えーっと……テレビで言ってたよ。」


「テレビ?」


「ごめん、今のは忘れて。

家の本に書いてあったんだよ。」


ビートに理由を聞かれた僕は咄嗟に

某探偵みたいなセリフを言ってしまったじゃないか。

まあ、家の本っていうのももちろん嘘なのだが……


「お待たせー。生活の授業を始めるよー。」


二限目始めの時間にピッタリ戻ってきた先生の言葉に

振り返ると、先生は台車を持ってきていたようだ。

その上にあったのは……

魔道具だった。

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