第102話 始まってからの三日です7

「……」


「おいおい、無視かよ。」


面倒な奴が来たものだ。

しぶしぶ後ろを振り返ると、アデクとその取り巻きがいた。


「俺らが参加してやるから、説明しろや、魔力無し。」


睨んでいると、アデクはさらに口を開く。


「ほぉー、そんな態度で、おまえのお父さんが仕事無くなってもいいのか-?」


嫌らしい笑みを浮かべるアデク。

どういうことだ?

奴の言葉を訝しんでいると、ビートが耳打ちする。


「アヤトは知らなかったか……

あいつの父親は公国議会の議員で、教育院の大臣なんだよ。」


なんだそれ。

いやな奴だと思っていたら、権力を笠に着ることもするのかよ……

まあ、ここで断って面倒な事になるよりは良いか。

そう自分を無理矢理納得させてアデクに向き直り


「わ…分かった。じゃあ――」


と『怪盗団』の説明をしていく。

それをアデクは聞き流し、説明が終わったタイミングで舌打ちを一つ……

こんにゃろう。そっちから参加してきたくせになんだよその態度は。

なんとか気持ちを抑えつつ、チーム分けに移行しようとすると、


「俺ら二年とおまえら一年で分かれるか?」


にやにやとしながらアデクが言ってきた。

少し考えるが、特に反対意見もないので従う。

正直、あのアデクの意見というのが怖いが……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕は木の陰から敵の様子を窺う。

なかなか相手も頭が回るようだ。

五人中二人が陣地の防御にまわっている。

すでに、ミリアちゃんとギーム、ビートが掴まっていて

そろそろ攻勢を仕掛けないとジリ貧になってしまう。

ルーシェちゃんには村の方で警邏を引きつけてもらっている。

僕かアレフでは三人も引きつけられないためだ。

そのため、二人に対してこちらも二人で仕掛けないといけない。


「どうする、アヤト。」


「うーん、囮作戦を使うかそれとも二人で出て行って攪乱するか……」


囮の場合一人で二人とも釣れるのかがポイントだな。

そうだなぁ、


「アレフ、何ミニぐらいなら逃げ続けられそう?」


「二人相手にか?」


「いや、一人相手に。」


「……三ミニ以上は難しいと思う。」


「そうか……」


再び考える。もう一人がしびれを切らして追いかけてくるまで

一人相手に逃げ回るっていうのは難しそうか。

それなら、作戦は一つだ。


「二人同時に出て行って、狙うぞ。

僕は左寄りから右に移動して狙っていくから、アレフは左を狙って。」


僕たちは相手を見据え、タイミングを合わせる。


「行くぞっ。」

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