第99話 始まってからの三日です4

つまらないなぁ、と思いつつ教科書を眺める。

先生に言われたページを無視してどんどんめくっていき、

次の学年、さらにその次の学年と進んでしまう。

それでもまだ興味を惹かれる物がない。

そうしていると、先生に見咎められてしまった。

「先に進むのは良いけど、ちゃんと今日の分をやってからにしてねー。」

なんていう先生に押されて、しょうがなく最初のページに戻る。


はぁ、数字の書き方とか分かってるし、そんなことやったって――


教科書に目を落とした僕は今更ながら気づき、目を剥く。

なんで……なんで数字がアラビア数字なんだ……

ここは異世界。そもそも使われている文字自体が違うのに、

なんで算用数字だけ……


少々混乱しながらもう一度少し先のページを開く。

そこで見つけてしまった。


「あっちの世界の国際単位系だと……。」


そう、そこに書かれていたのはおそらく長さと重さの単位だったが

どう見ても、小文字のエムやジーだったのだ。


「先生、ちょっといいですか?」


動揺を押し隠しつつ、念のため確認してみる。


「これってなんと読むんですか?」


「え?

こら、また先のことをやって。

ちゃんと今日の分はやったの?」


質問に質問で返すなと言いたくなるところだが

話が進まないので先に答える。


「やりましたよ。何なら何か問題出してくれてもいいですよ。」


「そう。じゃあ、後であてるわね。

で、質問の答えだけど、メーテとグロンよ。」


やはり、単位だ。それに、向こうの世界と読み方が似ているのも気になる。

うーんと、頭をひねっていると、授業もそろそろ終わりのようだ。


「はーい、それじゃあ今日の一問。

まず三年生から。」


そう言うと、黒板に数式を書く先生。


「はい、じゃあ――」


と一人の生徒を指名した。

あてられた生徒は黒板に答えを書き込んでいく。


「正解よー。

じゃあ次、二年生はーっと。アデク君。」


三年生が答えを書いている間に問題を書いた先生は次の指名を入れる。


「ちっ、俺かよ。」


しばし目をつむってから、黒板の元に向かうアデク。

そして、正解を書き込んだ。

意外とちゃんとやるんだなあいつ。


「一年生のみんな、今見てもらったように授業の最後には確認問題を出すからね。

答えを書いてもらうのは一人だけど、他の人も解くようにねー。」


そうか、さっき後であてるからと言っていたのはこれのことか。

じゃあ――と指名されたのは、予想通り僕だった。

特に悩むこともないのでさっと答えを書いて席に戻る。


「えーっと、正解なんだけど、

なにか疑問に思ったことは無いの?アヤト君。」


疑問?

首をかしげていると、隣からミリアちゃんが袖を引っ張ってきた。


「……あれ今日やったところじゃ無い。」


言われて、教科書と黒板を見比べる。

本当だ。確かに違う。


「って先生。確認問題でそれはダメでしょう。」


「ごめんね。真面目にやってなかった

アヤト君にちょっと困ってもらおうとしたんだけど

解いちゃったのね……」


「それは先生としてどうなんですか。」


「てへっ。他の子にはやらないから安心してね。」


おーい。


「それじゃあ、授業を終わります。」

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