第98話 始まってからの三日です3

「はい、それじゃあ授業を始めるよー。」


朝の会とは違い、眼鏡をかけたテレージア先生は黒板の左側に何か書き込んでいく。


二年生 算学 百から百二ページ

三年生 算学 百九十四から百九十七ページ


「二三年のみんなはいつも通りここを進めてね。

一年生には今から説明するよー。」


そう言うと先生は教科書の束を取り出して言う。


「はい、取りに来てねー。」


ガタッと音を立てて立ち上がるアレフとビート。

いつも通り寝ているギーム。

そんな三人を見まわすミリアちゃん。

ルーシェちゃんはいつの間にか音も無く立っていたようだ。

そんな各人各様の動きを見ながら、僕も前に出る。

そして、渡された教科書は五冊。

文学、算学、科学、社会学、生活。


あれ?


「先生、魔法学は?」


そう聞くと、後ろから


「おいおい、魔力無しの奴がなんか言ってるぞ。」


と声が聞こえたかと思うと、

アデク達がくすくす笑い始めた。

いちいちしゃくに障る奴だ。


「はい、みんな静かに。ちゃんと自分のやることやってね。

えーと、アヤト君、魔法はね――」


そう言うと二冊の教科書を指差す先生。


「科学と生活の一部でやるのよ。」


「そうなんですか。」


その後、全教科の教科書を受け取った僕たちは席に戻り、

説明が始まるのだった。


「まず、気をつけること。

教科書は返してもらうものなので、

絶対になくさない、傷つけない、書き込まない。

これを守ってね。

じゃあ、算学の一ページ目を開いて。」


言われたとおり本を開くと、そこは三ページに渡って目次だった。

その文字は、手書きである。

なるほど、これが使い回す原因か。

まだ印刷技術は最先端の技術として、

ほんの一部の文書にしか使われていないらしい。

なので、この教科書は写本だ。

そういえば家にある本とか公都で読んだ本とかもそうだったな。


「目次に書いてあるとおり、この教科書には

一年生から五年生までに習うこと全部が書いてあるよ。」


それで――

と黒板を指差す先生。


「毎回こういう風にその授業でやるページを書くから

しっかり読んで、問題を解くこと。

分からないことがあったら、どんどん質問してねー。」


そう言うと、先生は黒板に書き込んでいく。


一年生 算学 四から六ページ


「じゃあ始めてね。」


そう言われて、早速開くと……


……うん、まあ分かってたんだけどね。

何というか……絶対暇を持て余すよこれ。


そう、そこに書いてあったのは数字の書き方と、

一桁の数字同士の足し算だった……

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