第35話 今年の生徒は二人です2

まずは魔力を右手に集める。

そして、目の前の岩に向かって手のひらを向けて……


撃ち出せないっ。


横を見ると、ミリアちゃんも難しそうな顔でうなっている。


「やっぱりそうなるか。」


「オスカー、そりゃそうなるだろ。」


父とフリッツさんがなにやら話しているが、

気にする余裕が無い。

二人で試行錯誤していると、

肩に手を置かれた。


「はーい、ふたりとも、そんな肩肘張らないで、リラックスリラックス。

魔力は意思の力で動かすんだから、イメージが大事なのよ。」


「イメージしてるのに飛んでいかないんだから、

そんなこと言われても……」


「じゃあ、手のひらを前に向けているのはどうして?」


「お父さんがさっきそうやってたから。」


「そこね。お父さんは慣れてるからああいう形でも出来るの。

でも最初は、物を飛ばす道具の形をまねるとか、

ボールを投げるみたいな動作をしてみるとか、

とにかく、魔力を飛ばすイメージのきっかけを作らないと、

いつまでもイメージなんて掴めないままになるわよ。」


なるほど、手の形とか動作とかか、そこは盲点だった。

そういえば去年は父も右手を突き出す動作をしていたな。

あんな感じでやっていくのか?

でも、何かが違う感じがするな。

もっと、何かを飛ばすのに適した形か動作があるような……


考えていたが、何も思い浮かばないため、

しょうが無いから父のようにやるかな~、

と半ば考えるのを放棄しつつ空を見上げると、

鳥の群れが飛んでいた。


あの鳥は何だろな、とか

魔力放出を覚えたら、あんな高いところまで撃ったり出来るのかな?

とかとりとめの無いことを考えていると、ふと思いついた。


飛んでいる鳥の群れを撃つ?

そんな道具が向こうの世界にあったじゃないか、と。


早速実行しようと、岩に向き直る。

ちらりと横を見ると、ミリアちゃんもなにか思いついたようで、

やる気に満ちあふれた顔をしている。


「二人とも準備は出来たようね。

見ていてあげるからやってみなさい。」


言われて、僕は視線を前に戻す。

そして、

腕を前に突き出し、手をギュッと握る。そして、拳を縦にする。

そこから、中指から小指の三本は動かさないまま

人差し指と親指をそろえて真っ直ぐ前に伸ばす。

そして、魔力を右手に集めつつ、親指を上向きに立てる。

ここまで来れば何の形か分かるだろう。

最後に、親指を前に倒しつつ、魔力を……


できたっ。


岩をみると、ほんの少しだが欠け落ちている。


ミリアちゃんの方も成功したようで、目を輝かせている。

そして……

岩に向かって、乱射を始めた。


ミリアちゃんのイメージは何なんだろう。

両手を握って前に突き出している。

バイクのハンドルを握るみたいな……

でも、両手の間は拳二つ分ぐらいだし、腕もピンと伸びている。

何なんだろう?

母の方を見ると、思い当たる節があるのか、


「まさか、フリッツさん……」


とつぶやいた。

なんか、顔が怖いぞー。

って、ミリアちゃん、ストップストップ。乱射は危ないっ。


僕と母の二人で、暴走してしまったミリアちゃんを止めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る