第34話 今年の生徒は二人です1

ワーウルフとの戦いの日から約一年。

あれからは平和そのもので、

日課の身体強化の練習や、徒手格闘の練習をこなし、

たまに、三人組やミリアちゃんとも遊び、

楽しく過ごしていた。


そして今日は、父から魔法を教わったあの日と同じように、

アルヴ草原に来ていた。

ただ、去年とは違って、人数が三人増えている。

三人の内、二人はフリッツさんとミリアちゃん。

ミリアちゃんも身体強化を練習していたということで、

父に呼ばれたらしい。フリッツさんはその付き添い。

そして、もう一人は……


「ンギャ――」


「はい、よーしよーし。」


母の腕の中にいる女の子。

フーシアという名前のその女の子は、

二ヶ月ほど前に生まれた、僕の妹だ。

父も母も顔立ちは整っている方なので、将来に期待だ。


さて、今日ここに来た理由はというと……


「じゃあ、二人とも始めるぞ。

まずは二人とも身体強化をやってみろ。

右手からだ。」


そう言われて、僕とミリアちゃんは右手に魔力を集める。

もちろん一年前よりも多く、そしてスムーズに。

指示に従って、左手、右足、左足と次々に集めていく。


「よし、ようやくここまで来たな。

それにしてもアヤトは一年かかったか。

もう少し早いと思っていたのだが。」


うっ……面目ない。

しかし、どうにも魔力を動かそうとすると

とてつもなく重いのだ。

まるで、水鉄砲のなかに寒天を入れて、

無理矢理押し出そうとするかのように。

そのせいか、ミリアちゃんに遅れること三ヶ月、

ようやく父から次のステップに進む許可が出たのだ。


「よし、今日は二つのことを教えるぞ。」


そう、今日ここに来たのは、父からレクチャーを受けるためだ。


「今から教える二つは今まで練習してきた身体強化の応用とも言える。

一つ目は同時強化。

まあこれは身体強化を二カ所以上に同時に行うものだな。

で、もう一つは去年もアヤトに教えたが、魔力放出だ。

アヤト、仕組みは覚えているな。」


「はい。まりょくを集めてあいてに飛ばします。

まりょくは波でそれ自体がエネルギーを持っているので、

それを使ってこうげきをします。」


「そうだな。ミリアちゃんも分かったかな?」


「……なんとなく。」


「まあ、最初はそんなもんだろう。

これから実演するから見ていろよ。」


そう言うと、父は右手に魔力を集め出した。

そして、近くの岩に撃ち出した。

岩が砕ける。

ミリアちゃんが唖然としている。

僕も去年はこんな顔をしていたのだろうか。


「おーい、ミリアちゃん。」


「はっ……、まりょくがシュッて飛んでってっ、ドーンってっ。」


お…おう。


ミリアちゃんが興奮した様子で言ってくる。

そういえばミリアちゃんには

魔力の流れがはっきり見えてるんだったっけ。

そう考えていると、父から声がかかる。


「じゃあ、おまえらもやってみろ。」

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