第33話 今日は事情の説明です

「アヤト、心配したぞ。」


「ごめんなさい。」


「まあみんな無事だったから良かったが、

おまえが一度起きた後にまた意識を失った時は本当に焦ったんだぞ。」


「眠かったから。」


「はぁ~、ったく、おまえは。」


父はそう言って、病院のベッドの上で体を起こしている

僕の頭をワシャワシャとなでる。


「まあなんだ。おまえが無事で良かったよ。」


そして、父は目つきを鋭くして言った。


「俺が帰ってきたら、おまえが昏睡状態だと聞いてな、

メアリーからある程度は聞いているが、おまえにも聞く、

一体何があった。」


僕は、

ミリアちゃんプラスいつもの三人組と町をぶらついた後、

家の周りの林に遊びに入ったこと。

休憩していると、突然現れた男にミリアちゃんが捕まったこと。

そこに現れたワーウルフから逃げ出した男を追いかけて、

その先でワーウルフの群れに囲まれたこと。

その群れが百を超えていて、迎え撃つために男とその仲間と共闘したこと。

その中でカサビ水鉄砲を使ったこと。

ミリアちゃんが襲われそうになって、咄嗟に庇ったこと。

それで気絶してしまったこと。

と、覚えている限りのことを全て話した。


「それでよく無事だったな。そんなギリギリだったのか。」


父は驚いている。


「ディーさん達やギーム達のおかげだよ。」


「そうか……、お礼を言っておかなくちゃな。それと……」


そう言って父は僕の方に向き直る。


「アヤト、おまえが大変な時にそばにいてやれなくてすまなかった。」


「いいよ。ぶじだったんだし。でも、ひとつだけおねがいが。」


「なんだ?」


そこで僕は言った。


武器や魔法がなくても戦える方法を教えてほしいと――


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目が覚めてから、五日ほど経った。

体調もすっかり元に戻り、今日から日課に

身体強化の練習に加え徒手格闘術の訓練が入ることになった。


ここ五日は、今回の事件でお世話になった人達のところに

挨拶に行ったりしていた。


ギルドのところでは、

父とディーさんが知り合いであったという事実を知り、

フリッツさんのところでは、

最初は和やかに話をしていたが、

途中から父とフリッツさんがなにやら言い合いを始めた。


ミリアちゃんに魔導具を……とか、

身体強化の練習が……とか聞こえてきたが、

なんだったんだろう?


それはいいとして、

ミリアちゃんも、

アレフ、ビート、ギームの三人組も、

みんな元気だったのでほっとした。


そんなことを考えていると、父から声がかかる。


「それじゃあ始めるぞ、アヤト。」




ここから僕の物理系魔法使いとしての道が始まる。

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