第32話 捜査は難航中です

……知らない天井だ。


僕は目を覚ますと、まずはそんなネタ……感想が浮かんだ。


「「アヤトっ。」」


横から男女二人の声が聞こえてくる。

ああ、父と母だな。


お父さん、お母さん。

ごめん、もう無理……


……zzz。


神様のせいで寝不足になっている僕は、

昏睡状態から起きたばかりであるのにも関わらず

二度寝をするのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ギルド支部内、応接室。

テーブルをはさんでおかれた二つのソファーに座って、

四人が話していた。


「それは本当なんだな、ディー。」


「ああ、ユッド。」


ここにいるのは、騎士団長である俺、副団長、

それから暁の旅団のディーとレンだ。

指名手配されていた彼らに事情聴取をしていたのだが、

なにやらきな臭い話になっていた。


ディー曰く……


七日程前、公都ベルバリアにいた暁の旅団は、

いつものように依頼を受けようと、ギルドに入った。

中で、掲示板を見たり、顔見知りのパーティーと話したりしていると、

カウンターの方から呼ばれた。


「暁の旅団さんに、指定依頼が入っています。

詳細はこちらです。」


指定依頼とは、採集などの掲示板に貼り出される通常依頼とは異なり、

依頼者の出す条件に当てはまる登録員または登録パーティーをギルドが指定し、

依頼を発行するというものである。


依頼者が指名する指名依頼というものもあるのだが、

こちらはあまり使われないためほとんど聞かない。


それはさておき、指定依頼は主に警備や護衛の依頼に使われることが多いが……

やはり今回も多分にもれず警備の依頼であった。


「了解です。」


いつもは見かけない受付員さんで、

新入りさんか?それとも配属変更でもあったか?

と思いながらも、とある議員の屋敷の警護という指定依頼を受けた。


指定の時間はすぐだったので、

早速、依頼主である議員さんの屋敷へ向かった。

ギルドから石畳の道を歩いて十五ミニ、

結構大きめだが、過度な装飾のない、

依頼主の屋敷に到着する。


まずは顔合わせをしようと

ドアをノックしたのだが、返事がない。

さらに、屋敷の中からは人の気配がしなかった。

不審に思って、ドアに手をかけると、

ドアには鍵が掛かっていなかった。

ますます不審に思い、五人で話し合った結果、

とりあえずギルドに戻って、このことを話そうと決まった。


そうして、ギルドに戻ると……

なぜか暁の旅団が殺人の容疑で指名手配されていた。

依頼主である議員を殺したということになっていたらしい。


さすがのディーもこれには焦って、

ギルドを飛び出したところで警邏に見つかり、

捕まりそうになったものの振り切って逃げ、

公都を脱出した。

ここで広域捜査権のある俺ら、騎士団第三警邏団に

追跡、逮捕の指令が下ったわけなのだが。


そのあとは公都から南東に逃げてきて、

今朝ここの林を抜けようとしたところ、

ワーウルフの群れ、普通では考えられない二十匹からの襲撃を受けた。

数が多かったのと、強行軍の疲れからか三人が倒れてしまったため、

治療と休息のためにテントを張り、

薬草を探しに出ていたところで、子供たちに会い、

今に至るようだ。




「指名手配が出たタイミングもおかしいしな。

よし、副団長、公都の第二警邏団に伝えてくれ。

暁の旅団が受けた指定依頼について、

ギルドとそのときギルド内にいたパーティーに

聞き込みを頼む。」


俺はそう言って、今日の事情聴取を切り上げた。


面倒なことにならないといいんだが……

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