第31話 ここは神の前です

目の前に神々しいお爺さんがいた。


「ホッホッホ。

アヤト君、死んでしまうとは情けない。」


相変わらずオーラが眩しい。


「やっぱり死んじゃったんですか……僕。」


ミリアちゃんをかばって、ワーウルフの攻撃を受けて。


二度目の人生も長く生きれなかったことを残念に思うも、

女の子をかばって死ぬなんていう、

かっこいい死に様を見せれたというのならまだ良かったのかもしれない。

ただ単にトラックにひかれるなんて言うのよりはましだ。

結局、それで死んだ向こうの世界より短命だったわけなんだけれども。

はぁぁぁ~~


「冗談じゃよ。」


「冗談なんですかっ。」


感傷に浸っていた僕は思いっきり突っ込んでしまう。


「アヤト君は死んでなんかおらんよ。」


「じゃあなんで、『死んでしまうとは情けない』なんて言ったんですか。」


「ワシ、それ一回言ってみたかったんじゃよ。」


「じゃあ最初、僕が本当に死んだとき言えばよかったじゃないですか。」


「その時はワシらに非があったし、本当に死んだときに言ったら冗談にならんじゃろ。」


「それは……」


ぐぬぬぬ。その通りだ、言い返せない。

でも、なんか悔しい。

よし話を変えよう。


「えーと、僕が死んでいないのであれば、ここは?」


「君の夢の中のようなもんじゃよ。」


「夢ですか……」


「そうじゃ。これから三日以上は寝たままになるのじゃから、

お互いの暇つぶしとして話をするのじゃ。」


「わかりました。じゃあまず、一つ質問いいですか?」


「いいぞ。なんじゃ?」


「アヤトって名前は神様が?」


「そうじゃよ。君の新しい世界のほうの母親の夢にな。」


「なるほど。でもどうして?」


「前の世界では、その名前で二十年ぐらい生きてたんじゃろ。

その名前になじんでいるんじゃから、名前が前と違うと、

咄嗟に呼ばれたとき反応できなかったりするじゃろ。

だから、これはワシからのサービスサービスじゃよ。」


地味なサービスだな。

でも有用かも。


「ありがとうございます。」


「さて、質問にも答えたことじゃし。色々話そうかのう。

そうじゃ、孫二人も呼んでいいかのう?」


「そうですね、二人よりも四人でしゃっべったほうが楽しいかもしれませんね。」


そうして、四人で三日間ワイワイしゃべるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三日目、そこには寝不足の男がいた。

被告人の弁はこうだ。


「すまんすまん。神託は夢への介入という形で行っておって、

今回はそれを使っておるんじゃよ。

それで夢へ介入したら、内容を忘れられんように、

その人が起きる時間まで意識を保たせるようにしてあるんじゃった。」


つまり、簡単にいえば、

昏睡状態なのに三晩完徹

である。


信託を受けた人間が熱出したり、体調を崩したりするのって、

神の強すぎる力を身に受けてうんぬんかんぬんではなくて、

ただの寝不足なんじゃねーか。


まあいいや。


「それでは、神様。三日間ありがとうございました。」


「こっちも楽しかったぞ。あ、そうそう。

君、最強の魔法使いになれる才能ちゃんと持っとるぞ。」


「そうですか。がんばります。」


「それでは、また機会があったらのう~。」


「はい、それではまた。」


ピカ――


こうして三日間が過ぎたのであった。

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