第23話 林の中は危険です3

僕たちの左右で僕たちを守るように

二人の男が魔物の群れと戦っている。


僕は話しかける。


「ミリアちゃんっ、だいじょうぶ?」


「……だ…いじょ…ぶ。」


「よかった。でも、このじょうきょう、どうしよう。」


僕は周りを見る。

後ろは岩壁であるが、前方は相変わらず数えたくない量のワーウルフに囲まれている。

右では、二本の剣が舞い、

左では、矢が飛び銀閃が走る。

しかし、二人はテントと僕たちを庇うように立ち回っているせいか、

防御の割合が多く徐々に体力が奪われていく。


「やべっ。」


ディーさんが浅い沢に右足を踏み込んでしまい、バランスを崩す。

ここぞとばかりにワーウルフが二匹で跳びかかってくる。


「ディーさんっ。」


ヒュッ、と矢が飛んできて右の敵の目に刺さる。

もう一匹は、バランスを崩した勢いを利用したディーさんが左の剣で切り上げる。


「サンキュ。助かった、レン。」


そうして二人は魔物と戦っている。




「このままだとまずいぞ。」


ビートが言う。

それは僕も分かっている。

けれど、助太刀する方法もなければ、

逃げるための妙案も浮かんでこない。

そんなとき、ギームがこんなことを言い出した。


「たぶん、まもるだけなら、これでいける。」


彼は盾を持って言う。


「ほんとうかっ?」


「にひきぐらいなら。」


そう言って、ギームは父から聞いたらしいワーウルフの情報を言う。

いわく、奴らは狡猾。

足をよく狙ってきて、敵が動けなくなったところで数匹で殺しにかかってくる。

逃げようとする敵がいれば優先して襲ってくる。

薬草などは自分で食べてしまい、治療をさせない。


「それで、ほんとうにまもれるの?」


そう疑問に思って聞くと、

作戦はいやらしいが、一匹一匹の動きは足を狙う直線的な動きが多いため、

多数、多方向から攻められない限りはいけるらしい。


「けれど、こんかいは、かずがおおすぎる。」


普通は五から十匹ぐらいの群れになるはずって聞いたんだけど、

とギームはつぶやく。


そうか、ギームが前衛で守れるのか。

でも、ギームだけだとすぐに敵が集まってキャパオーバーするな。

後衛でひるませるだけでもいいから攻撃が出来れば……


アレフ、ビートとともに持ち物をあさる。

リュック、水筒、水鉄砲、ハンカチ――

このなかで使えそうなものは……

他にも、使える物が無いか周りを探す。


「いしでもなげるか?」


アレフがそう言うが、ビートが制止する。


「それじゃあ、あいてをおこらせるだけだろう。」


「じゃあ、どうすればっ。」


あの沢も浅すぎて、水は汲めないし……

そう考えつつそちらに目を向けると、

とある植物が群生していた。


あれなら……でもそれをするには問題が一つ……


「アヤト…くん?」


ミリアちゃんが心配そうに声をかけてくる。

彼女だけでも逃がしたいのに……

せめて、僕が魔法を使えたら……

……魔法?

そういえばミリアちゃんは……いけるかもしれないっ。


僕の頭に電撃が走る。

すぐさま、五人で集まり、

作戦を伝えるのであった。

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