第10話

中根と富田と井上とわたしの四人で帰る道。中根と富田と井上が真横に並んで歩く。わたしは三人の後ろをついていく。三人だけで会話が進む。後ろをとっとこついていく。ひよこみたいに。

三人がすたすた歩く。わたし一人だけ外れてる。おまけとして扱われてる。他の人がこれを見たらどう思うか怪しくなる。躓きながらついていく。ひよこみたいに。

道路を横に広がるのは危ない。と言いつつわたしも並ぼうと試みる。でも一人分の間隔を空けてくれない。わたしのことなんて忘れたみたい。ガードレールが邪魔で通れない。このままじゃ轢かれる。ひよこみたいに。

ひよこ。とことこひよこ。とっとことことこ。

一匹のひよこ。

ピー!

ピー!

わたしはこれらと違うんだろうな。

ピー!

「普通」とか「一般」「常識」「変」「おかしい」「筋」「道理」「道徳」「正常」「健常者」って何ですか?明確に説明しろ。ピー!

ピー!ピー!ピッピッピピピ、ピー!ピーピピピーピピピッピッピー!何がどう変なのか。ピーピピピーピピピッピッピー!ピッピッピピピピッピッピピピ!何故何のための常識か。ピッピッピピピピッピッピピピ!ピーピーピピピーピッピッピピッピッピ!普通が定義できるはずあるのか。ピッピッピピッピッピピッピッピピッピッピピッピッピ!ピッピッピピッピッピピッピッピピッピッピピッピッピ!語感に頼って内容を考えてないんじゃ。

言語は不完全。それをニュアンスで誤魔化すな。そういうアバウトで飾りつけ程度の言葉は使わないはずだよ。わたしにはあるわけないよ。そんな曖昧に生きてないよ。ひよこは。

チキン達が遊び狂う。チキン達が優劣をつけたがる。チキン達はひよこの叫びの真価を知ろうとしない。肉質なだけのそれらは未来を見ることすらできないんだろうな。飼料を食べて卵を産んでろ。

何でわたし、こいつらと連んでるんだ。

冷めた冷めた。卵も冷めた。

帰ろう。

時間の無駄。

鶏小屋から巣立つひよこみたいに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛以外 いろいろ @goose_ban

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る