○ 七月七日
シャラシャラ、キラキラ……
夜の空の上、天ノ川が音を鳴らしながら流れて行く。
きらめく流れは、見た目ではわからないけれど、思ってたより速くて。
川のほとりで、立ち尽くした。
どうしよう。今年こそ、逢えるかなって思ってたのに。
一年にたった一度のチャンスなのに、ここ最近、毎年のように天気が崩れて逢えたためしがない。
昨日、大雨が降ったけど、今日は降ったり止んだり曇ったりの天気だったから、もしかしたら、と思ったのに……。
「彦星様……」
やっぱり、無理だったのか。
その昔に、七月七日にしか逢ってはいけないと、そう決めた天帝様が少し憎らしい。
でも、あの時は私たちにも非があったし……。
川の向こうに、あの人の姿は見えない。
川の流れは速く、カササギたちも、橋を架けることは出来なさそう。
今年も、やっぱり逢えないのね……。
薄々、予想はしていた。
だって、毎年のように、この日には雨が降る。
今年こそは、って思ったって結果は同じ。
このまま、一生逢えないんじゃないか、あの人は私を忘れてるんじゃないか、このまま逢えないままだと私はあの人の顔や声を忘れてしまうんじゃないか…………それが、私は怖くて怖くて堪らない。
カタカタと小さく震えだした身体を、両手で抱き締めた。
そのまま膝をつく。
「…………っ」
空が晴れたとき、あの人が川向こうに現れてくれるって、私たちはきっと逢えるって、そう祈って。川のほとりで待ち続けた。
シャラシャラ、キラキラ……
相変わらず、見た目にはわからない速さで、天ノ川はきらめき、流れ続けていた……──
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