23: 東へ

とても長い昔、子供だ。怪我をした少女がある。少女の奇妙な顔立ち。少女を家の中を入れる。少女は変な声を夜に出す。それは感情がなく、複雑。思考を生きたまま体の外に出す。少女はそれを言葉という。


少女は私を言葉を与えた。声が調節するのを難しい。少女の真似をした。少女は真似をして欲しくなかった。でも声を出してほしかった。自分の思考を言葉にしろという。私には思考がない。ただ感触があるだけだと思った。


少女は自分でないことを話した。ここではない遠くのことを。


少女は家族に帰るたい。少女は西を逃げてきた。仲間が沢山死んだ。恐怖。何故なのか知らない。西から逃げ、家族とはぐれた。どこにいるのか分からない。東には実り豊かな楽園があるという。どこだ知る。神が教えてくれた。神は何。雲の上にいる人。物事の全ての初めに世界を作った人。


では少女は私の神だ。私の思考を作り出した。


西の災いは私たちを追ってきた。調子の悪いものが少しずつ増え、ある日、全員が死んでいた。


二人で東へ逃げた。東には楽園があるという。西はだめだ、黄金の悪魔の種がやってくる。西は未来だ、過去へ逃げよう。


いくつもの細い水を渡り、平原の毛を掻き分け、大地の肌荒れを登った。月は虫の羽のように目まぐるしく姿を変え、子供の頃から知っている植物は少しずつ減っていきもはや見当たらなかった。やがて私達は雪の空の土地に到達した。私は既に子供ではなく、少女は既に少女ではなかった。


私はもはや東へ行くことは出来ない。私は少女に貰ったこの思考を少女に返そうと思う。黄金の悪魔の種に捕まらないように願おう。


最終間氷期の終わりが、私たちの渡ってきた土の橋を崩し、追っ手を閉じ込めた。大気はより甘く深い青色になり、見慣れた獣は次第に数が少なく、体格が小さくなり、やがて壁画の中にだけ現れる不思議な模様となった。しかし、追っ手は遅くても、やがて私たちに追い付くのだった。複雑な声を出し、思考を交換させ、数百の塊となって我々を追い詰める、背丈の低い不気味な人が西から追ってくる。

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