最終話
全能神を倒してから、数千年の月日が流れた。マリア達上位嫁sは上位神へと昇華し、今では様々な世界を管理している。各世界に俺を崇める教会が建てられ、現在も俺の最下位嫁—―女性の信者が増えている。トウヤ教の女性信者はその全てを俺に捧げなければならないのだ。時々敬愛な信徒を下位嫁――下位神へと昇華させたりしている。
そして全知全能の力を手に入れた俺は、全てに飽きてしまっていた。全知の力で過去未来も、宇宙の真理であろうと人の感情であろうと、全てを知ってしまった。全能力で力も女も、時間であろうと空間であろうと、全てを手に入れてしまった。
欲しいものはすべて手に入る。知識も概念も、何もかも。宇宙なんてポンと作り出せるし、やろうと思えば人間は手が10本ある生き物だという概念も作り出せる。
想像も破壊も思いのまま。俺にできないことは何もない。
いや、1つだけある。なんでもできるというのは、何もできないに等しいのだ。俺はこの力が、要らなくなった。目的を失った俺はもう、死んだも同然だ。
毎日毎日、無限の時間の中で転生してからの冒険の日々を懐かしむ。二度と戻ってこないあの日々。俺は俺自身を殺せない。全知全能の力をもってしても手に入らないもの。それは自分自身の過去だ。
もう、終わった。俺は死にたかった。終わらせてほしかった。
俺の人生はとっくの昔に終わった。2度目の人生もだ。なのに、俺は生き続けている。生ける屍とは、俺のことを言うのだろう。俺は死にたい。死ねないが、死にたい。
俺の全知の力は死ぬ方法を知っていた。準備は整った。後は実行するだけだ。
中位嫁――中位神に、俺が想像した世界に日本人を転生させるよう命じた。死んだ日本人を、我々の手違いで死んだと勘違いさせて、スキルを与えて転生させる。俺の、『強奪者』のスキル。このスキルは唯一、全知全能の力を超えるスキルだった。これと同等のスキルは、全知全能の力では生み出せない。
だから待つのだ。転生者が、その身に宿したスキルを開花させるのを。強奪者と同等のスキルを、引き当てるのを。
俺には視える。三十七京十九兆七十八億五千十二万七千九百八十八年、四か月と十一日先の未来、俺が転生者に全ての能力を奪われ死ぬのを。
それを行う転生者が異世界に召喚されるまで、後、九十三億八十一万二千五百十六人。俺は待ち続ける。この能力を奪われるその日まで。
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)
やっと、この日が来た。さあ、俺を殺してくれ!
「神よ! 俺はお前の全てを奪い、最強になって見せる!」
転生者と俺の激しい戦いが始まった。力と力のぶつかり合い。手加減を尽くし、転生者が死なないよう心がける。やがて戦いは終幕へと突入し、遂に、転生者はスキルを行使した。
「俺は負けない! すべてを奪う。奪ってやる! スキル『強奪』!」
全知全能の力を越えて、そのスキルは発動する。俺の力を全て奪い、転生者へと譲渡していく。
やっと死ねる。これで終わりだ。
能力を奪われ、俺はただの人間に戻った。転生者が俺のもとに近づいてくる。
「これで終わりだ。最後は車しないよう、一発でやってやる」
「ありが……とう」
光の奔流が俺を包み、消し飛ばす。魂が崩壊していくのを感じながら、俺は知った。
自分が何故転生したのかを。自分は何故全能神を倒したのかを。
転生者よ。お前もいずれ知ることになあるだろう。自分が何故、転生したのかを。
終わり
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