第1話

壱、青鬼の願い

あの日からどうも胸が痛むのだ。僕なんかが、恋しても叶うはずなんかないのに。

 

「君が、眩しくて仕方ないんだ」

「・・・はい?」

「いや、ある日を境になんか、君が眩しくて」

「‥‥大丈夫?」

いつも、冷たい君がそう返して、しかも本当に心配してくれている顔なだけに、傍から見たら俺は今、絶対変人だと思われているということが分かる。

「病院、予約しとく?」

さらに、気の利いたことをいってくれるなんて、と少なからず感動する俺。いやいや、大丈夫と首を横に振ると僕が恋してしまった人―横田綾奈は言った。

「何でいきなりこんなこと言い始めたの!?」

「いや、だからつまり好きだよっていうことで…」

「はあああああ!!??」

彼女は数分間呆れのような戸惑いのような表情を浮かべた後、

「・・・葵、あんたに一週間猶予を与えようか。きっと、私に恋をしたことを後悔する。」

俺が恋した赤鬼は言った。

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泣いた赤鬼 @akizukina

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