第3話それとも命

(3)


それから毎日通い続けた。


ある日は花を持って。

ある日は美味しいご飯を持って。


毎日何時間もお喋りを楽しんだ。


こんなに幸せだと感じたことは生まれて初めてだった。

あの子が笑う度に心が満たされる。

その度に笑顔を求めてしまう。


しかし、たまに会話が噛み合わない時がある。

例えば僕が、今日は外に出ないかい?と聞いても、「あ!飛行機雲だよ!」と返って来たりする。


あんまり人の話を聞かないタイプなのかな?


ま、この子と一緒に居られるなら何でもいいかな。


あまり深く考えないことにした。

面倒なことは嫌いだからね。


あ、そうそう。面倒なことと言えば一つ。


この前古くからの友人に呼び出された。

友人はこう言った。


最近、ここから見える大きな屋敷に君が通うのをよく見る。

聞いたところによると、可愛らしい女の子にくっついてるらしいじゃないか。

人に頼ることも時には大切なことだが、君にとってはなんのプラスにもならない。


人間の為に生きているだけの『ペット』と同じだ。


と。


そして別れ際に鋭い槍を投げられた。


君は生を全うしなかった。

生きるために存在する能力は、生きるために使わないと死ぬんだ。


どういう意味か分かるかい?


……分からないみたいだね。


つまり、君の命はもうすぐ尽きるということだ。


僕は言ってやった。


『ペット』でも、幸せならそれでいいんじゃないか。


とね。

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