第4話その両方かもね

(4)


こんにちはお嬢ちゃん。今日もいい天気だね。


こんにちは可愛い娘さん。今日は雨だけど来ちゃったよ。


やあ、小さな少女さん。今の時間を教えてくれるかな?


あんたは、えっと……。

あ、ああ。いつもの嬢ちゃんか!忘れてなんてないよ?


毎日同じ場所に、同じルートで、同じ人に会いに行く。それだけなのに、最近はそれすら忘れてしまいそうになる。


でも、何故かあの家に行くことは忘れない。

そして、あの時の友人の言葉も。


人に飼われているペットはどんな気分なのだろうか。

皆が皆幸せという訳では無いだろうな。


なにせ人は醜い。


スマートフォンと呼ばれる機会に没頭して、それが無いとコミュニケーションすら測れない。


たった一つのまとまりの、小さなグループの中で強者を決める。選ばれた者はそのちっぽけな世界の中で地図を開き、一本しかない道を図太く歩んで行く。


でも、人に唯一美しいものがあるとしたら。


心?


とんでもない。


愛?


薄っぺらい。


金?


汚い。


僕が思うに、それは。


共有。


かな。


鳥も魚も群れを成すのは敵から身を守るため。

その敵の中には勿論人間も入っているだろう。


食物連鎖の頂点に立つものは人間だと言われている。誰もが知っている基礎知識だ。

しかし、ずっと不思議に思っていたことがある。


何故、この世界で最強の人類は群れを成すのか。


それは共有という文化があるからだと思う。


自分はいいからと他人に渡す。

そんなこと普通はしようと思わない。


初めて彼女にあった日もそうだ。

一緒に食事をしようなんて初めて言われた。


僕の命はもう尽きる。

せめて、彼女の前でその魂を天に送りたい。

もう起きることがないと眠ったが、まだやり残したことがある。


僕は鳥。鳥の僕が人間と恋愛なんて有り得ない。だから拒否してきた。

でも、それは何の意味もない。

僕は鳥として、彼女に想いを伝えるんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る