6日目 雨のち雨

 あれから、結局私は、何も言えなかった。

沈黙を貫いたというより、自分にとって何が正解か、何が不正解か分からなかった。

自分なりの正義感や、これは悪い事だという善悪の判断も自分でつける事ができると思っていたが、そんな価値観は通用しない事もあるんだと20歳になる前に気づけた。


 「―私は、何を伝えればこの問題の正解を出す事ができるんだろう。」


 和人先輩は亡くなっていた。

私の目に見えて会話をしている和人先輩は幽霊?

そんな事を言って、誰が信じるの?

そんな事を言って、最愛の人が香織先輩に見えなくて、私には見えると伝える事がどれだけ香織先輩を傷づけるのだろう?


「そんな、―そんな事を、言えないよ。」


 今日はしとしとと綺麗な雨。

「あなたも、泣いているの?」私は、空に問いかけた。


 その雨は3日続いた。

気付けば梅雨真っ只中に突入したらしい。

雨サーの活動も盛んになる時期だ。


 私は、蓮の葉から滴り落ちそうな水滴の如く、か弱い決心をぐっと心に留めた。


「会いに行こう。」


 

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