5日目 晴れの日

「―かおりちゃん。」声のする方を向くと、相変わらず綺麗な人だと思った。

同じ名前なのに、程遠い差を感じる。


 香織先輩と遊んだというと、周りの皆から羨ましがられるのだろう。

手を引かれるがままに、香織先輩に連れ回られた。

「かおりちゃんは、何で和人を知っているの?」私は、ついにこの時が来たと思った。何となくこの話しからは逃れられない。私自身も不思議に思っていたことだからだ。

「私と同い年で、私がずっと好きな人が、和人なの。」香織先輩は続けた。


「―あの日は、大雨だった。私たちはいつも通りサークル活動にでかけたわ。」


「香織!見てみなよ。蛙が親子でおんぶしてる!」

「本当!とっても可愛い。」


 私は、彼の大人な外見から垣間見られる子供の様な笑顔が大好きだった。


「大雨が続いて、サークルの皆で、今日の屋外活動はそろそろやめようと話していたの。」

「その時、雨の中からまばゆい光が見えた。」

「次の瞬間、私は和人に包まれて地面に倒れていた。」

「和人は、雨に打たれながら横たわっていたの。」


「それから、一日後彼は亡くなったわ。」


私は、この後、私に起こっている出来事をどうやって、香織先輩に伝えたらいいのかを必死に考えていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る