第265話 クロノセイバー、故郷の大地を防衛せよ!
ヒュビネットが仕向けた大師団がアル・カンデを襲撃する。
一昔前には想像もしなかった大事件に、オレ達は騒然となった。
火星圏でその情報を耳にした時点では、まさかそこまでの異常事態であるなど、誰も想像などしていなかっただろう。
だが――
宇宙と重なる事が叶うオレの高次元意識領域では、すでにその現実が予見されていたんだ。
『サーフアウト、完了! 目標座標軸へ到達を確認しました! クオンさん、やはりこの宙域の事態は……!?』
「最悪だな……! だがオレ達フォースレイアーへと覚醒した者には、この状況はすでに見えていた! そうだな……
『ええ、見えていたわ! ならばここで、右往左往している場合じゃないわね!』
『クオンさんの言う通り、状況はすでに把握してるっす!』
だがそれでも、オレ達は因果をすべて見通す事などできはしない。
それが直後、危機的事態として我が
キャリバーンより先行で木星圏へのクロノ・サーフィングに成功したオレ達は速やかに、宙域に於ける防衛軍の戦線状況把握に務め、
が……その戦況把握の最中に響いた通信に、一瞬視界が暗転しそうになったのを覚えてる。
『――がう! こちらCTO防衛軍本部
「……っ! こちらサイガ少佐!
『貴君らがこの宙域にいると言う事は、使ったのだな……禁忌の高次元跳躍航法を! だがその話は後だ! そちらが、この戦況の本質を把握している前提で通達する! こちらでこの宙域をスキャニングした際、非常にマズイ事態を確認した――』
『これは最優先事項だ! 敵勢力からの無人機動兵装部隊が一般市民を……偶然居合わせた所、それらが拉致されたのを確認した! 両機の
「なん、ですって……!? 一般市民がこの戦線で!?」
けれどオレ以上に、訪れた非常事態へ戦慄と憤怒を覚えた者がすぐそばにいたんだ。
『拉致された市民が移送された宙域と、民間無人航行シャトルデータを転送する! 何としても、そのシャトルに乗る紅円寺学園の生徒達を救ってくれ!』
『……
耳にした言葉で弾かれた様にモニターを見やる。
視界に入れるは他でもない、
見開く双眸、そこから刹那に溢れる、止めどない憤怒はオレでも感じ取る事が叶うモノ。
だからこそ――
今オレ達の取り得る最善の方法を勅命へ乗せ、
「聞いたな、
『……了解っす! クオンさんの想い、無駄にはしません!
憤怒はすでに限界を超えているはず。
それでも彼は口にした。
彼が国際救助の旗を掲げるは即ち、己の私的な感情のまま突っ走るを良しとしない決意と覚悟。
そこにいる格闘少年は、もう昔の学園生徒の範疇など超越する。
オレの背を守る事さえ叶う、故郷アル・カンデが生んだ太陽系最強の勇者だった。
気炎纏い、赤き爆光が帯を引き翔ぶ。
モニターで視線のみであるも、「任されたわ」の返事を
ならばオレ達は、オレ達が成すべき事に尽力するまでだ。
「
『
今まで後方を守り続けた
エイワス・ヒュビネットが巻き起こした、最悪の大戦から故郷を守り抜くために。
》》》》
耳を疑う言葉で、視界が消え入りそうだった。
けれど直後、止めどない憤怒に包まれたのをよく覚えてる。
アル・カンデと言う故郷へと、部隊本隊より先に舞い戻った俺達は驚愕の事態を目の当たりにし――
そこでさらに軍部の
だけどそんな事は百も承知なあの人は、すぐに俺が翔べるための算段をぶち上げた。
何の事はない……彼は俺達部隊の前線指揮を任された
俺へ真っ先に翔べと言い放ってくれた。
「国際救助の旗の元、民間人救出のため指定宙域へ向かいます!!」
そんな彼の想いに応えるならば、私的感情で飛び出す訳には行かない……行かないからこその国際救助の旗掲示の意思。
もう俺は、この星間国際救助を
『
「了解っす、
セカンドコックピットから響く
そこには俺と同じ悲痛が混じり込んでいた。
それも当然……
データに歯噛みする俺も、感覚でそれが紛れもない事実と悟っていた。
民間シャトルから、俺と切っても切れない家族と仲間の霊的な気配を高次元を通して感じ取っていたから。
けど……今までと少しだけ違うのは、感じた感覚のどれもが恐怖や絶望に飲まれるものじゃない、前を向き果敢に立ち向かおうとしている強い意思。
有り体に言う所の、勇気に燃える魂の咆哮を感じた。
そう……そこにいる俺の友人達は恐怖で
ならば俺の取るべき行動はたった一つ。
この機体へ国際救助の旗を掲げて、希望を招来する炎陽となり彼らを照らす事しかないんだ。
「行きます、
『了解! 行きなさい……ここがあなたの、挑むべき戦場よっ!』
眼前へ次々と溢れる無人機動兵装群を睨め付けて。
こんなもので俺と
国際救助の旗を掲げるならなおの事……弱者へと手を伸ばすまで絶対に諦めるなんてできないんだ。
「俺達の邪魔をするなっ! どーーーーけーーーーーっっ!!!」
無人で殺戮を成す有象無象などに、かまっている暇はない。
俺の進路へ立ちはだかる全ての機体を叩き、穿ち、薙ぎ払いながら進軍する。
機体スラスターのありったけを使って進めば、そこから
視線は救うべき者達の所へ。
魂は周囲を包む気配無き殺戮兵装へ。
刹那――
倒しても倒しても湧いて出る気配なき物質反応の遥か後方へ、真逆の強烈な魂の咆哮を感じた。
そばにあるはずのエウロパどころか、木星さえも飲み込む膨大な意識の本流。
すでに経験した事のある、宇宙の深淵の化身たる存在が――
『愚かな人間の成れの果てが……俺様達の崇高なる大戦へ水を差しやがる。だが――』
あのブラックホールの化身と
「あん……たは、マサカー! マサカー・ボーエッグ!」
『久方ぶりだな炎陽の勇者! ライジングサンと
小惑星の衝突をも上回る鉤爪の激突は、以前にも増して禍々しく光輝き、機械的な装甲の
すでにライジングサンの二回り近くまで大型となったそれは、もはや破壊衝動そのものと呼んでも差し支え無き最強を体現していた。
『こちらで、あの成れの果てが余計な真似をしたが、それもまたテメェが選んだ因果の道だ!ならば俺様を超えて行かなければ、守りたい者も守れねぇと知れ!
『俺様とテメェの最後の勝負……逃げるなんてこたぁねぇよなぁ!!』
「……受けてやる! 受けて立ってやるよマサカー・ボーエッグ! それが俺の選んだ道なら、あんたをぶっ倒して仲間とお袋を助けに行く!」
『カカッ……良い返事だ! なら見せてみろ! 人類最強の、恒星の如き勇者の戦いをなぁっっ!!』
人生史上最強の、それも
けれど臆する理由なんて存在しない。
炎陽の勇者たるライジングサンと
俺の視線の先には救うべき命があるんだ。
思考へ想いが重なる時、俺の魂が爆ぜる。
「いざ――」
『尋常に――』
「『勝負っっ!!』」
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