第260話 開かれる地獄の扉
だが軍備増強と言う形を取るも、あの
それは元来
そして……それを補う形での、楽園の禁忌開放と言う決断でもあったのだ。
『しかし
「あなた方の防衛力や、そのために発揮される統率を疑うつもりはあらしまへん。けれどあのフレスベルグを初めとした禁忌が、当たり前の様に太陽系を
『分かりました。しかし、あなた様の御身体になにかあれば、このソシャールも立ち行かなくなりますゆえ。そこは
楽園最深部となる開かずの扉〈
巨大なホールとも神殿とも取れる祭事壇上で、天女と見紛う女性が僅かな照明の中、通信にてやり取りを行う。
楽園の管理者である
その開放が叶うのは、地球地上は日本国の血統……
即ち、日本国の誇る三神守護宗家と繋がりを持ち、
案ずるはC・T・Oの現指令官である
決意の楽園管理者へ、せめてもの心配りを贈り通信を切断する。
最低でも岩戸開放がならなければ、彼女は一切の通信さえ行えず、儀式の舞をただ舞い続けるだけである。
あるが故の労りであった。
例えそこで異変が起きたとて、その開放の儀は止める事ができないのだ。
全てが遮断された神殿祭事場は、
そこへ――
凛とした鈴の音と、僅かに布が擦れる様な音が小さく響き渡った。
「人の地照らす
シャンッ……と、時折響く音に混じり紡がれる
さらに舞が激しさを増すと、
そんな神秘を体現する儀式が行われる最中――
軍により進められる軍備増強の合間へ差し込まれる、別案件が発生していた。
「〔はい、お手数をおかけしました。では私達、
「うおっ!? あれ、最新鋭の
「すごいっ……ちゃんとした軍部の職業訓練施設って、こんなになってたんだ。」
シャトルから降り立つや、訓練ソシャール内ではしゃぎ回るお騒がせ武術部員達。
引率は当然暁の理事長
巡り巡る因果は絡み合い、苛烈なる
未来のためにと奮起する者達と、未来を夢見る子供達が一同に介するこの宙域へ――
程なく破滅の鐘が鳴り響くとは、誰も想像だにしていなかったのだ。
》》》》
「状況を説明しろ! 何があった!」
楽園防衛軍施設のオペレーション・ルームの扉を開け放つ
彼の視界に飛び込むモニター群――その
「それが……超広域スキャン実施時間に、この様な映像が! しかしこんなのはありえません! それらが現れた宙域は、先程まで一切の不穏な影は見られず! それが突如、この様な機影群が姿を現したと……!」
「……そんなバカな事があるか! 何も無い宙域に、突如謎の機影が大量に出現するなど……待て――」
血相を変え嫌な汗に濡れるデータ観測員へ、投げる怒号も何かに感付いた様に、タッチキーを叩く軍部指令。
それにより計測された数値で、指令は愕然とする事となった。
「これ……は、高次空間を介した次元跳躍……!? 周辺宙域に無数の局所的高重力変異……まさかこれは、禁忌の超技術、
双眸を見開く軍部指令の言葉で、オペレーターみなが戦慄した。
その禁忌の技術は、
通常
だが眼前へまき起こる事態は、そんな技術体系の秩序ある運用と言う概念を吹き飛ばす、歴史上最悪と言っても過言ではない出来事であった。
オペレーション・ルームへ映し出されるは大艦隊に加えた機動兵装の大軍。
それが次々次元跳躍を経て、
同時にそれらがすでに、機関を含めた火砲へ火を入れ攻撃体勢に移行しており、問答無用の砲撃が始まるのは時間の問題となっていた。
「こちらも
怒号はそのまま、軍部指令が指示を飛ばすか否か。
そこへ申し合わせたかの様に響くは、部隊の誰もが忘れる事のできない……しかし想像だにしない通信であった。
『かつては世話になったな、楽園防衛軍の諸君。しかし今回は以前の様にはいかんぞ? こちらも火星に眠る、劣化版ではあるがロスト・エイジ・テクノロジーの産物を持参した所だ。ああ……お前達が実力を出せる様に、主力以外の機動艦隊に兵装のほぼ全てが自立稼働だ――』
『しかし
「……まさ、か!? ヒュビネット……エイワス・ヒュビネットか!! この様な事をして、一体何の得がある! 答えろっ!!」
映像は
そして映し出されたのは、かの
この時代、
されど彼の声は通信越しで届くも、肝心の旗艦となる
軍部指令も訪れへ不審を抱きつつ、速やかなる防衛行動の指示を飛ばした。
ともすればこの危機は、宇宙人の楽園陥落さえも意味していたから。
「……返答はなしか! ならばこちらも動かざるを得まい! 関係セクションへ通達……これよりC・T・O楽園防衛軍本部は、敵をエイワス・ヒュビネット率いる部隊、サガー・カルツと認識して対処に当たる!」
「出せる防衛部隊のありったけを出撃させろ! アル・カンデ全宙域へも戦時非常事態宣言を! なんとしても、我らの楽園を守り抜けっ!!」
「りょ、了解です! 関係セクションへ通達、開始します!!」
楽園防衛軍の真価が問われる驚愕。
遂に牙を剥いた漆黒の策謀。
しかしその牙は、未だ全貌を見せた訳ではなかった。
これより控えるは、
数万に及ぶ大師団が控えたその状況下――
未だ
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