第232話 赤と蒼、太陽系 救世の使者伝説
遥か
太陽系を守護せし神々に
だがその高位霊長類は短命から、進化を繰り返す様因果によって運命付けられた生命。
その進化の過程で、度々進化の方向を見誤る者が現れた。
ある時一部の霊長類が、
その結果、命を守るために生まれた神々の体躯である機動兵装が、大量破壊兵器として変貌を遂げてしまう事となる。
やがてそれは
それこそが誤った文明を終わらせる〈蒼きオメガ〉と、破壊後の世界から新たな文明を生み出す〈赤きアルファ〉である。
終わらせる者
太陽系は火星圏内縁入り口宙域にて。
その時戦慄が走る事となる。
それは人類が、決して踏み込んではならぬ過ちへとその手を伸ばした事により、
その者は即ち神々よりの遣い。
アルファにしてオメガ……破壊と再生を体現する神話から蘇りし無垢なる化身。
命の危機に晒された、力無き弱者を守る盾として舞い上がった赤き恒星、アーデルハイド・ライジングサンと――
襲う悲劇と絶望を終わらせるため、彼方より羽撃き舞い飛んだ蒼き
「なん、だ……これは!? 状況を……状況を報告しろっ!」
赤き
「トランピア・エッジに任せたエリート機はすでに、三分の一が中破以上を被っております! 無人機の第一陣は全て壊滅っ……強襲艦隊へも、数艦へダメージが蓄積していると報告がっ――」
「ふざけるなよ……たった一機でそんな事が叶うはずはない! あれは何だと聞いている! あの機体が引き連れる、複数で編隊を組むドローン隊の様な武装はっ! あれではまるで――」
「まるで、あの蒼いのを中心にした強襲突撃部隊ではないかっ!!」
悪意の女官が戦慄を顕とする事には、眼前で目にも映らぬ速度で舞い飛ぶ蒼き羽撃きが、周囲へ大小無数の殲滅兵装を従えていた。
それは
その一隊一隊が、火星圏連合の無人機一小隊を上回る戦力数値――
『メーデーメーデー! こちらファイアーナ級突撃艦……弾頭発射口とスラスターをやられた! 我、航行不能! 繰り返す、我、航行不能っ!』
『隊長殿、指示を! こいつらとまともにやりあっては……うわぁぁーーーっっ――』
『フランツィースカ殿、これ以上戦線を維持できない! 撤退を進言する! もはや我らは、ただ的になるだけだ! こんなものを相手取るなぞ、私は聞いていないぞっ!』
無数の妖精乱舞の強襲を受けた戦場は、大混乱に陥った。
弱者へ大量虐殺兵器を仕向け、勝ち誇っていた火星圏連合の姿はもはや存在しない。
人智を凌駕する驚異を前に、右往左往する哀れな人類のサガだけが戦場に残された。
眼前の恐るべき禁忌の存在へ立ち向かおうとする、勇猛果敢な兵はどこにもいなかったのだ。
その時より、刹那とも思えた時間を越えた不逞の大艦隊は――
遂に、
》》》》
圧倒的なまでの戦力差を見せつけた禁忌の蒼が、疾風怒濤、獅子奮迅、電光石火を体現する中――
残る部隊の雄達も、もはや
『いやぁ、壮観だねぇ〜〜。ああ、シャトルは私が防衛するよ。っと……名乗りが遅れたねぇ。私はグラジオス・ロデル・ウーラニアス……まあ名よりは
『今は問答は不要だよ? まずは、この状況の終息を見る方が先決だねぇ。』
「クラウンナイツ!? ……なるほど、事態が急激に好転したキッカケはあなたも噛んでいたと。了解しました、こちらはクロノセイバー指令である
シャトル護衛に着く
しかしそんな号令を待つまでもなく、オートマニピュレートで送り付けられた機体に搭乗する両支援隊の面々は、すでに機体動力機関への火を入れフルスロットルをくれていた。
『こちら
『なんか凄い方がお目見えね! でもクリフ大尉に同感だわ! カノエ、エリュ……私達は旗艦側へ飛ぶ! お姉さまをライジングサンへ送り届けるわっ!』
支援隊面々はそれぞれの隊長よりの指示を受けるや、怒涛の勢いで戦線巻き返しを図った。
エリート擁する
すでに士気が低下の極みを見せていた敵エリートも、勢い付き三位一体を見せる真のエリートには手も足も出ず……火星圏で誇った勇猛が嘘のように弾幕の雨あられで無力化されて行く。
対し、旗艦側へ飛んだ女性を目指す者達の目標は唯一つ。
今
そこに群がる無人機群の第二陣、第三陣を、木の葉の様に払いながら駆け付ける。
そして後方、戯けた准将に守られながら進むシャトルの道を切り開きつつ、速やかに戦い続けた勇者の元へと馳せ参じた。
「
『……はは、ありがたい……お言葉っす。けど、もう……意識、が――』
セカンドコックピットより、ありったけの賛美を贈る双炎の大尉。
だが限界をとうに越えた
ほどなくその意識が途切れるか否か……ファーストコックピット内へ、外部より侵入する影。
「あんた、本当に凄いわね……。私を救い、ソシャールを救い……そしてあんな大艦隊を一人で食い止めるため命を賭した。その背に背負う数多の命のために、決して倒れる事無く……決して砕ける事無く……――」
安らかに双眸を閉じ、限界の身体を休める勇者。
男の娘大尉にとって、それは大きすぎる存在の寝顔であった。
彼の数多の功績を思い返す彼女は、
そして――
「……んっ。こんな時に卑怯だけれど、私も決心が付いた。今の私は、それを求める者がいる。こんな思いにさせてくれたあなたへ、これは感謝の気持ち。私だけが知る、感謝の気持ち……。」
卑怯と自虐した少女は、その唇を勇者へと重ね、彼女なりのけじめを付け明日を向く。
自身が口にした、自分の存在を待つ者……自分が救い上げた地球上がりへと想いを集約させるために。
ささやかで切ない時間を越えた男の娘大尉は機体へ滑り込み、事を悟った二人の家族からも盛大に弄り倒されていた。
『あらあら、隊長ともあろうものが。なかなかに卑怯な恋模様ねぇ〜〜。』
『あら〜〜卑怯だわ〜〜。でも〜〜けじめは付いたの〜〜?』
そんな弄りでさえも、今の彼女の心は全て受け止める。
とても晴れやかで、少しだけ哀愁を乗せた面持ちで。
「弄ってくると思ったわよ(汗)。でも、これでいいの。私には私の目指す恋がある。それをやっと、見つける事が出来たから!」
一皮向けた返答は、今まで共に死線を潜り抜けた二人へも驚愕を呼び、ほどなく二人も大切な隊長少女の様に晴れやかな面持ちへと移り行く。
『こちらハイデンベルグ! 只今、指令含めたブリッジクルー緊急受け入れ態勢へ以降中! なお、後詰めとなる特務大尉を中心とした、セイバーグロウの反応も確認した!』
『旗艦再起動と同時に、クロノセイバーは正常活動へと移行する! 我が同胞方、ここからが反撃の時……油断無きよう努めよ!』
旗艦側の受け入れを進める
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