第232話 不死鳥計画
それは言うに及ばず、彼らの主力である
幸いにも軽度のダメージですんだ、
「ブルーライトニングの修理状況は芳しくありませんね。それも致し方ない事でありますが。」
「ええ。幸いにもクオン様のお身体の方は、順調な回復を見せている様なのです。制限下にあるとは言え、ロスト・エイジ・テクノロジーの一端に準える生体ナノマシン修復機能が、クオン様の復調に一役買った様なのですよ。」
旗艦指令室で任務調整に臨む
彼らがやり取りする言葉でも明らかとなる、
霊機修理を阻む要因は言うに及ばず、それがロスト・エイジ・テクノロジー上のブラックボックスとされる事に加え、肝心な動力炉の構造把握が至難を極める点である。
さらにその要所を部隊で
だが――
英雄のみが知り得るはずの禁忌へ、思いも寄らない所からアプローチをかけた者がいた。
それは地球から
「
「私、ですか? ええ、今は待機命令中ですので。何かありましたか?」
旗艦指令さえも霊機の現状に頭を抱える中、
部隊が動く事叶わぬ今、双炎の大尉も手持ち無沙汰とそれに応じたのだが――
その地球から
挑戦する老齢の言葉のままに時間を割く双炎の大尉。
向かった先は大格納庫――それも修理作業に追われる
そこで挑戦する老齢は
彼が独自に調査した、禁忌の機体と称された存在のブラックボックス……即ち、正体不明の
「大尉は少佐より、この機体動力炉の詳細を聞き及んだ事はおありですか?」
「いえ……何分こちらも、ライジングサンの機体調整に追われ、そこに来て続く何事の最中でしたゆえ。彼に
耳にした言葉で逡巡した挑戦する老齢は、そこからが本番とばかりに身を乗り出し、キーボードパネルを操作し始める。
宙空へ浮かぶ大小様々なモニターへ、次々コードに数字の羅列を打ち込む彼を、怪訝な面持ちで見やる双炎の大尉。
視線はモニターを注視したまま、挑戦する老齢が言葉を投げた。
「確か
「もちろんです。ヤタナギ・オート・モーターグループ……国内外のあらゆるスポーツカーを、宗家が構想する対魔討滅の任務に於ける
「であればこの、禁忌のΩと称されたブルーライトニングの動力炉構造には、見覚えがおありでしょう。」
問いへ返す双炎の大尉も、かけられた斜め上の言葉に疑問符が脳裏を埋め尽くす。
しかし直後……見ろと提示された映像へ視線を移した双炎の大尉は――衝撃の余り絶句する事となったのだ。
「……っ!? こ、これは……この構造はっ! マツダ技術顧問、まさか――」
「やはり、この機関構造をご存知でしたね……。これは因果が齎した奇跡とでも言うのでしょうか。私もこの構造に近似したものを、よく存じております。ええ、忘れる事など出来ましょうか。」
「これは紛う事無く、クインテシオンを並行励起させる規模の偏芯回転機関……ロータリーエンジンです。」
蒼き翼へ……復活の光が指し始めていた。
》》》》
三日三晩医療室ベッドの上と言う状況は、なかなか身体に堪えたものだ。
けれどそれは致し方無き事、あの漆黒を屠れなかったオレの敗退こそが要因だ。
だが、ジーナは守り抜いた。
オレも今間違いなく生を享受している。
敗北を嘆く必要なんて存在しなかったんだ。
「クオン、起きてる? 入るわね。」
「
そんなオレがいる夜分の病室へ、ジーナと入れ違う様に訪れた
この三日オレの身を案ずるジーナが、事ある度に病室に訪れ世話を焼いてくれていた。
無下にも出来ぬ状況でもあったため、愛しき者となった彼女の想いを甘んじて受けていたのだが。
「こんな夜分に訪れたと言う事は、見舞いの域ではなんだろ? 任務に弊害がなければ、一向に構わないんだが。それに――」
「ええ、驚いたでしょう。けれど、何を置いてもあなたから直接聞き取る必要があると、彼を……マツダ技術顧問に同席を願ったの。」
奇しくもそこへ揃ったのは、地上で言うモータースポーツに一家言ある者ばかりだった。
が――
その邂逅こそが、ブルーライトニングの新たなる翼を得る出会いであるとは、オレも想像などしていなかった。
その口から放たれたのは、オレさえも驚愕を覚える内容だったんだ。
「サイガ少佐、お身体が順調な回復を見ている様で何よりです。私も、折角
「未だお身体の全快でない中、失礼を承知で質問させて頂きます。少佐はあの
「……っ!? それを、調べたのか? いや……そうか。あなたの出生を鑑みれば、それに気付くのは理に適っているな。そもそもあなたは地球で、唯一無二とも言えるエンジンを世に送り出した会社が存在する、日本国の出生なのだからな。」
時代的には大きくズレもある。
今地球地上は大規模環境異変を変えるべく、あらゆる面でのエネルギー技術大転換を余儀なくされていると、数年前訪れた彼の地で友人である
そのため、地上世界は化石燃料に依存する社会から脱却するためのエネルギー改革へ舵を切ったとも。
肝心の古代技術に於いては、かの英国が要する〈
その様な、化石燃料依存から来る重大な環境汚染要因の一端に上げられるガソリン型スポーツカーは、一般国民の意識から消滅していてもおかしくはなかったんだ。
だが彼は口にした。
加えて、さらに驚くべき彼の素性を聞き及ぶや、脳内へ激しい閃光が駆け抜けたのを覚えている。
その内容は――
「私が
「中でも、その改良を一手に引き受けたロータリー47士の意思を継ぐ部署こそ、我が古巣にして故郷であります。」
「……っ! それ、は……オレも地上の友人から、47士の
魂が震えるのを感じた。
蒼き力があの漆黒に並ぶと言うだけではない――
その閃光が
そんなオレの思考を
「はい。僭越ながら私から、かのグラディウスシリーズは
走り抜けた閃光が、オレの目指した遥かな未来を照らし出した気がした。
ブルーライトニングの、ブラックボックスとされた全てを開放する時が訪れたのだと――
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