第213話 ファクトリー奪還作戦〈セレシオル・ミッション〉
すでに
その中での召集と相まって、パイロット全員が緊張をそれぞれの面持ちへと覗かせていた。
「ファクトリー奪還作戦を前に、有力な案を準備してくれたと察しているが……進捗はどうかね? 」
旗艦指令としても、霊装機隊を初めとした各々がただ闇雲に案を
言うに及ばず彼の耳にも、パイロットらの艦内奔走は届いており……
だが敢えてそこへ口を挟まなかったのは、
そんな面持ちで、召集した気鋭達を見やる旗艦指令の視界に入ったのは、気概に溢れる
旗艦指令をして、その姿が今までより一層成長した様に映り……程なく感じたものが偽りでない現実を見せつけられる事となる。
「はい……。今回の任務をスニーク・ミッションと想定した、機動兵装主体の作戦を我らで検討した所……満場一致で作戦概要と、それに適任とされる機体及び作戦指揮者を選出しました。
まずはと英雄少佐が切り出して後、作戦指揮者として前へ歩み出た者に旗艦指令が目を見開いた。
そして直後、指令としてもその時が訪れた今を祝福する視線へと移り行く。
かつてより――
「今回の作戦は私、
「さらに宙域間でのサポートとして、ブルー・ライトニング率いる
「
堂々と作戦を提示して行く
しかし旗艦指令としても、今の今までライジングサンを炎陽の勇者専用機として扱って来た手前疑問も生じる所。
そこを対処した上での作戦提示と思考するも、敢えての確認を取る。
当然の質問へ、猛る声を上げたのは炎陽の勇者であった。
「その点については、俺から説明させてもらいます。ライジングサンは確かに俺専用の基本設計により生み出されました。けどそれはあくまで基本設計の話であり、俺のお袋……いえ――」
「暁会長は、こういった事態も踏まえた拡張性を機体へ持たせていたのを確認しています。今回はそれを有効活用し、
すでに勇者の面構えとなった少年からそれは放たれる。
その姿に、同パイロットらはなんら侮りなど抱いてはいない。
それは勇者が勇者として生み出して見せた、成長の証に他ならなかったからだ。
双眸を閉じ思案する旗艦指令。
そこには守りきれなかった
そして彼女が命を賭して守り抜いた正しき義の力が、どれほど素晴らしき物かを改めて思考へと刻み込んで行く。
蒼き英雄と炎陽の勇者……そしてそれを支える、勇敢なる志士達全ての姿を。
「委細承知した。今作戦を提示された概要で承認、以降その様に進め給え。全艦へはこちらで追って指示する。
「了解しました。」
最後に全てを締め括る了承を、赤き大尉へ送った旗艦指令は臨時作戦のための会議を終えた。
程なく……作戦決行に向けた最終ブリーフィングがパイロット間で開始される事となる。
》》》》
パイロット間ブリーフィングであらかた作戦指示を受けた俺は、今回完全に裏方へと回る。
そこまでに必要なシステム掌握手順を、今までサポートパイロットだった
「それじゃ俺も機体に搭乗っす。システム起動後は、
「分かっているわ。さあ、行って準備しましょう。」
けれど一向に晴れない彼女の不機嫌は相変わらず。
どこか視線は和らいだ感じがするのに、俺との会話は言葉少な。
う〜ん……どうやったら
『(ライジングサンと
『(そこから
クオンさんによる作戦概要は、潜入部隊である俺達を微小惑星に取り付かせた、自然浮遊物体に紛れての行動が起点だ。
現在ジーナさんが先行し、
ファクトリーの監視網は最新ではないけれど、熱源センサーに光学センサー程度は備えている故の対応だ。
あのメンフィスって奴が、それ以上の監視機器を持ち込んでいなければの話だけど……接近後はクラッキングによる監視網ダウンに乗じて潜入し、ファクトリーを奪還。
そんな作戦概要を頭に叩き込みながら、コックピットまでのハンガー階段を上がる。
前を行く
正直、このまま彼女との意思疎通がままならない状況では作戦もないと……ちょっと焦りが出初めた俺の視界。
ちょうど、メインとサブのコックピットへ分かれる通路へ差し掛かった時だった。
「……
「あっ……と、そうっすよね。了解です。」
ようやく振り向いたと同時に飛ぶお小言。
やっぱり、勝手にライジングサンを弄り回したツケが回って来たかと――
嫌な汗に濡れた俺は視線を泳がせて直後、こんな態度ではと改めて
の、だが……あろう事か、俺の視界が突然アップになった彼女の顔で埋め尽くされる。
そして、柔らかいモノが俺の唇を襲い……一瞬何が起こったのか理解するのに時間を要してしまった。
「それとこれはお礼よ。あなたがライジングサンのパイロットでなければ、私は決してこの様な晴れ舞台に立つ事は出来なかった。感謝してる……
僅かに思考し、自分がようやく
彼女は思いも寄らない言葉を、出撃の合図としたんだ。
「
「……って!? ぬぁんですとーーーーーーっっ!? 俺を、が……あ、
顔からは吹き出す汗が炎の様に
その中で俺の目に映った彼女の笑顔は……そこに女神が降臨したかの如く輝いていたんだ。
衝撃の出撃合図を受けてしまった俺は、ガチゴチに固まった身体のままコックピット搭乗を見るも、跳ねる心臓を抑えるのにしばらくかかってしまったのだけど――
脳裏を掠めた、翔子ちゃんにアシュリーさんの態度へようやく合点がいくや否や、苦笑がこみ上げて来た。
「なんだよ俺、モテモテじゃん。けど……今はそれに浮かれている場合じゃない。行くぞ、ライジングサン。お前がその新たな名を冠しての、最初の救済ミッションだ。」
「けどこれからは、
深呼吸と共に相棒へと言葉を投げる。
これよりは、
魂に響く、ライジングサンが発したであろう「上等。」との気概を胸に刻みながら――
機関出力を限界まで抑えた、
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