第157話 小惑星帯の激突、失われし船達
「(始まったか……。これより先はもはや巨大なる因果の只中――頼むぞ?舞い上がりし二つの
「監督官殿! ええ、現在
そして
混迷を極める戦場で、拉致された議員ら救出作戦までも同時進行する旗艦ブリッジへ小さな影が到着する。
言うに及ばず、
古代技術管理監督官 リヴ・ロシャ嬢である。
彼女の意識は直前まで、かの憂いの観測者が入れ替わっており――今回はそれの指示に従った形の速やかな行動でもあった。
「旗艦各セクションの技術認証――その生体コード解除は全て終えました! 後はブリッジに存在する最終生体認証のみなのです! 」
「それらは艦内とは言えかなりの距離を行き来したでしょう……尽力に感謝します監督官! さあ、こちらへ! 」
禁忌と呼ばれた船は漆黒が有する凶鳥だけではない――この剣を
今の今まで人命救助をのためと救急救命艦の体を取り続けたが、それはすでに過去の話。
因果が牙を剥いたならば、剣の旗艦は守りの盾としてではなく穿つ刃としての使命を果たさねばならない。
「いいですね、
「今さらです、監督官殿。すでに奴らは引き金を引いている。ここで躊躇しては救える命も救えない――ならば我らは、一丸となって因果の道へと突き進みましょう! 」
「……分かりました! では――」
ブリッジ中央に位置する
同時にコンソール中央へ現れた文字の羅列。
それは遥か
〈呪われた聖剣〉とも称されるシステムは、その名を【キャリバーン・システム】と記していた。
そのまま旗艦指令を一瞥した監督官嬢は、覚悟宿す双眸で
旗艦が秘めたる禁忌の技術 最終生体認証が成された。
そして――
「我、観測者に仕えし
「
響く
艦表層を覆う外板部の至る所が直線的、または鋭角に曲線を伴う形状のラインを形成する様に分割し……内包されていた集光部が
その集光部を通し、すでに備わっている滞空兵装群に主砲群からメイン・サブ各種リアクターへと蒼き光が走り抜けた。
直後、船体外部装甲が全体に渡って薄発光の粒子膜を纏ったのだ。
そして艦両脇を固めるサブリアクター部が斜めにスラントすると、超射程を誇る主砲――ロングバレル・対艦バスターキャノンが左右それぞれへと迫り出した。
そう……遂に〈ロスト・エイジ・シップ〉と呼ばれた、荒ぶる禁忌がそのヴェールを脱いだのだ。
「指令様! これより旗艦認証コードは【コル・ブラント】より【キャリバーン】へと変更されます! 全艦へその旨をお伝えする様……そして——」
「旗艦動力である
「ええ、その旨……艦内データ通信にて皆へ伝達しましょう! ではハイデンベルグ少佐、機関最大! ここにいてはまたあの対艦収束砲の餌食だ——」
「前方のトランピア・エッジが擁する部隊中央を突っ切る! 同時に各艦、フレスベルグとの近接対艦戦闘に備えよっ!」
「「「「「了解っ! 」」」」」
鬼気迫る指令の指示へ、操舵を務める
直後旗艦出力が、今までの救済防衛艦止まりであった最大値を大きく上回る上昇を見せると——
「最大戦速――旗艦 キャリバーン……奴らの中央を食い破れっっ!! 」
禁忌を解放した聖剣が宙域へと蒼閃を撒きながら……進軍を開始した。
》》》》
その個体名称を〈キャリバーン〉へと改めた蒼き閃光を纏う旗艦が、
曲射対空砲群をばら撒き、護衛たる
宙域を占拠する圧倒的な火力は、かつて〈呪われた禁忌〉と呼ばれた船の姿をまざまざと見せ付けた。
しかし禁忌が正体を現そうと、彼らの目指す姿は変わらない。
それを宣言するかの部隊が発艦を今かと待ちわびる。
『各員よいか! 旗艦が戦艦の名を頂いたとて、我らが
『ならば我らが取る行動はただ一つ……それを肝に銘じて時を待て! 』
『『『『イエス、サー!! 』』』』
響く咆哮は
救急救命の任を担う、
「クリシャ……そして各員よく聞け! これより赴く戦地は、これまでと全く危険のベクトルが違う! そこは言わずと知れた戦場……人の悪意が渦巻く地獄だっ! だが——」
だが——双眸には今までとは違う憂いを乗せて、各員へと通信が放たれた。
「我らセイバーハンズが熟す任務は変わらない! その目に映った要救助者を、余す事無く救い上げる救急救命任務こそが全てだ! 各員、奮闘せよっ!! 」
『『『『アイ・マム!!』』』』
白と赤のカラーが舞う
思考に浮かべたかつて救いきれなかった数多の命へ懺悔する様に。
「これまで私が救う事叶わなわず天に召された数多の者達よ、見ていてくれ。これより私は、かつて己が無力を刻まれた戦場へと再び
「今度こそ、生きるべくしてそこにいる命を救い出してみせる! もし私が不甲斐なき姿を見せた時は容赦など必要ない……問答無用で私を冥府へ引き摺り込むがいい!! 」
覚悟を
女神が救いの英雄たる敢然たる事実と共に。
その独りごちる姉の言葉を通信で耳にしたのは
姉の過去に悔いる様な思考とは異なる想いを双眸へ宿していた。
「(姉様はかつて戦場で多くの要救助者を救えなかった事に、無用なまでの後悔を抱いている。確かにその後悔はなくてはならないものなのだろう。けど——)」
救いの英雄と呼ばれた姉は彼女にとっての師であり、目標でもあった。
だが——それらよりもまず優先される想いが、妹少尉の思考へ広がっていく。
例え血の繋がりは無かろうと、シャム・シャーロットと言う女性は紛う事なく——クリシャ・ウォーロックにとってのたった一人の姉なのだ。
それを口にせず……しかし、双眸に映る女神の機体コンソール上に想いの証を視認した妹少尉。
姉に一切の相談なく機体へと配備していたのは——携帯式の
彼女は救急救命隊員である。
それを正式に所持する許可など得てはいない。
それでも妹少尉は覚悟を決めていた。
姉に極秘の内 密かに訓練し続けていた、機動兵装シミュレーションでの砲撃実戦技術を引っ提げて——
「(この様な戦地で万が一 ……サイガ少佐に
「(私は躊躇なく、姉様を守るためにこの銃を取る。例え己の職務を失う事になっても……! )」
遠き日——
彼女を襲った
颯爽と現れた救いの女神は――絶望的な惨状であった被災地帯から、彼女を死の淵より救い上げた。
何日も生死の境を彷徨った妹少尉が最初に見た者こそが——
全てを災害で失った自分の無事を溢れる雫と供に喜び、案じていた……シャム・シャーロットその人であったから——
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