第138話 Ωエクセルテグ
「各データ観測を開始するっす!
『
それは
整備Tの恒例行事である突貫工事を得た
兵装の運用を見据えた整備の諸々は、すでにイカツイ軍曹の手であらかたを終えた所ではあった
が——当のオペレーターである双光の少女の危機的状況が影響し、テスト運用が先延ばしとなっていたのだ。
だが、
『メレーデン少尉!現在その機体は完全な素の状態——即ちそれを活かすも殺すも君次第と言う訳だ!ならば遠慮はいらん……君が思う
『
「了解です!ジーナメレーデン——
機内モニターへ映る
コックピット然としたそこを注視し……システムのあらかたを頭に叩き込んだ双光の少女が吼える。
それは他ならぬ双光の少女が、
『ジーナ!今後のザガー・カルツとの遭遇戦を想定し、幾つかの管制パターンを準備して置く!だが君が機体に感じた特性でコレと思う物があれば、遠慮せず申し出てくれ!』
「えっ……と、ハイ!私もほぼパイロットとしてのオペレートは初めてで、まだ慣れるのが精一杯ですが——すぐにでもこの子を乗りこなして見せます!」
『ああ、いい気概だ!では行くぞっ!』
「了解です!」
それは
すでにブリッジに馴染む新進気鋭——兵装データ観測担当である
機体試験運用の最中。
休息と一時的に宙域へ止まる機体より、二人の蒼きパイロットが観測艦へと移り……打ち合わせも兼ねた小休止を満喫していた。
「クオンさん!エクちゃんの航行速度から算出した、
「待……て、ジーナ。そのエクちゃんと言うのはまさか、
「そうですけど?その方が可愛いでしょ☆そんな事よりクオンさん、この運用方法で私が思うにですね——」
そう……確かに小休止である。
だがその光景を、テスト運用状況観覧に訪れた物好き達が——眼にするや嘆息と生暖かい視線を送る事となっていた。
「ねぇ、お姉様?あの二人……何かありました?何かこう——絵も言われぬラブラブ感が……(汗)」
「私はこの様な不埒を視察に来た訳ではないのだがな。まあ……何かあったのは間違いなかろう。」
「はは……(汗)アシュリーにバンハーロー大尉が察した通り。まあ色々とあったみたいで……。」
眼にした者達の抱いた感覚はその二人を覆う空気を表していた。
上官と部下と言う関係性で言うには余りにも近過ぎる距離感。
ともすればそのまま抱き合ってしまいそうな……何人もその間に入る事すら
そんな雰囲気を、
「あの……三人とも——俺は特段、変わった感じはない様に思うっすけど。」
そこへ響いたまさかの言葉で時間が停止する。
それはまさに同じく観覧に訪れた
「いつ……き、君?はぁ~~——」
「えっ!?ちょっ、何でそんなあからさまに溜息を!?」
「これは、重症だわね。お姉様……お察しします。」
「いや……アシュリーさ——」
「未熟者だな……。」
「バンハーロー大尉までっ!?」
明らかな至らぬ感へ
拳で戦う事にかけては群を抜く少年も、色恋沙汰に於いては確実に誰もの後ろを行く無様を晒していた。
しかしそこで、僅かな疑問に辿り着いた男の娘大尉がダメ元で質問を投げたのだが——
それが予期せぬ重き過去話へと発展してしまう事となった。
「って……バカ
「ちょっ!?俺をハブらないでもいいじゃないっすか、アシュリーさん!?」
「……ふぅ、ヤブ蛇だったな。言っておくが私は妻も子供もいる。火星圏に残してきたままだがな。」
「「「……えっ!?」」」
そう……その時点ではまだ、色恋沙汰の延長上であったのだが——
「その代わり息子はかつて私の部隊に所属し……そして私が受けた任務で生じた失態の中、この私が見殺しにした。」
「私がその判断を下さねばならなかった時……それを救い出したのはかの救いの女神——現在のシャーロット中尉だったのだ。」
色恋など彼方に吹き飛ばす鉄仮面の部隊長の過去。
耳にした三人も、言葉を
一瞬で落ち込んだ空気を晴らす様に、鉄仮面の部隊長は僅かに口角を上げて語る。
気に病む事はないとの意思を込めて。
「すでに過去の話……息子も現役を退いたが、存命だ。何よりこの部隊と出会ったお陰で、私が生きている内に女神へ礼を贈る事が出来たのだ。」
「感謝こそすれ、
過去を乗り越えた鉄仮面の部隊長。
それこそが彼を鉄仮面たらしめる所以である事を、同部隊に属する勇者らは後に知る事になるのであった。
》》》》
かつて禁忌とも
そして今は私の愛機となった、エクちゃんに搭載されるシステムを徹底的に頭へと叩き込みます。
大まかなシステム部分は、
「ナイト・ストライク・ガーヴシステムにセイバーガーヴシステムか……。それにこのストライク・ガーヴの〈アサルトモード〉システム上に存在している、量子無線式 半自律機動兵装 アサルト・ガンシップ〈ヴァルキリー・ジャベリン〉——」
「まだロールアウトしたばかりの現状では、十分な機動データが得られていない——なら現状すぐに使用可能なナイト・ストライク・ガーヴを中心に詰めて行く方が効率もいいかな。」
未知なる拡張装備——
その実は拡張機能などではなく
『ジーナ、構わないか?機動実験プランのあらかたは終了した。
『オレ達が先に見舞われた事態を考慮してのものだ——その好意を無駄にはできないぞ?』
「あっ!はい、了解ですクオンさん!すぐにシステムをシャットダウンさせ……て——」
『……?どうかしたか、ジーナ。』
「あ……いえ、何でもないです!では私も向かいます!」
エクちゃんのオペレートルームで詰めていた私を呼ぶクオンさん。
ちょっと前に、いい感じになってしまった……英雄であり——私の素敵な人。
でも私は彼を命の危険に晒してしまい、シャットダウンの言葉でそれがフィードバックして来ます。
けど——
今の私は、その事を大げさに卑下する事もなかったんです。
それどころか……それを教訓に前へと進まなければ行けないと——決意すら心に宿した自分がいるのを強く感じていたのです。
「(
「(私が
そして知らぬ内に私は己の限界を超えようと走り出していたのです。
その身を包んだ、
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