第126話 一騎打ち!赤き炎陽と灼銅色の戦狼!
時刻としては、すでに一騎打ちが開始されて程なくを経た頃——
一連の事態収拾にようやく目処が立った
総大将が詰めるかの部屋でお付を従え彼と相対していた。
「殿下も此度はご尽力に感謝しかありません。大変……お疲れ様でした。」
「民のために尽くすのが皇族の務め……礼には及ばぬわ。」
破天荒皇子としても、未だに皇王国上層の大半で彼の行動が気まぐれで場当たり的と
それは彼に付き従う
即ち彼女が察する危機的状況を一つの予見とし……破天荒皇子自らその危機の元を潰して回っている事実に他ならなかった。
それを誰に語る訳でもない皇子の行動は、まさに正統に皇王家を継ぎし覇王の所業——行動全てが
——その破天荒を演じる覇王の元へ……恐らくは未だかつて無い危機の知らせが舞い込む事となる。
すでに防衛軍総本部内へ足を向けた皇子にとって……それは致命的なタイミングでもあった。
「のうシバよ……ここでの事務処理を終えればまた、各宙域を飛び回る事になりそうじゃが——」
総大将の部屋へ着くやくつろぎを顕としていた
先の現出から変わらず、安寧を呼ぶ彼女が表層へ現れていた。
しかし——皇子の言葉へ割って入ったのは……
「緊急警告……エウロパ宙域小惑星帯で、ただならぬ危機を感知。この因果のただならぬ乱れはΩを司る者を脅かすと推定……。再度警告——Ωが、堕とされる恐れを感知。」
「ワン……ビ——なんじゃと!?」
常に事を冷静に見据える破天荒皇子が動揺を顕とする。
防衛軍総本部では、
すでに真の勇者の真価を見せ付ける赤と、並々ならぬ信頼を寄せる蒼が揃う戦場——破天荒皇子をしてそれは万全の態勢と太鼓判を押せる対応であったはずだ。
が……護衛少女は極めて危険な事態と告げ、冷静沈着を時で行く少女ですらも一刻を争う旨を双眸で訴えかけて来る。
危機宿す彼女を見やるや、事を見誤れば取り返しが付かなくなると直感した皇子。
弾かれる様に通信を——今誰の目にも付かぬ場所で待機中である者へと飛ばす。
事の顛末を知りえぬ総大将がいるその場所で——
「将軍、聞こえるか!?【
「……で、殿下!?今……今なんと仰られ——」
『こちらミドー。すでにフリーディアにて該当宙域へ向かっております。彼を——やっと言葉をかわす事が出来る友……クオンをやらせる訳には行きませんから!』
「カツ……シ!?
皇子の言葉へ驚愕を覚えた総大将。
元来皇王国直属の者が太陽系中央独立区へ訪れる事は稀であり、余程逼迫した事態が無ければ軍部上層の人間ですら立ち会う事は無い。
そして……皇子へと返答を返す声に、総大将すらも耳を疑った。
当然である——当時の少年染みた幼さを残し響いたその声は、あの8年前に蒼き英雄が引き篭もる要因となった……行方不明のまま捜索が打ち切られた少年の物であったから。
皇子の発した命と総大将の驚愕の眼差しを置き去りにする様に、
「クオン……待っていてくれ。フォーテュニア——フリーディアの出力最大……行くよ!」
『イエス、マスター!出力を最大へ……フリーディア、
因果渦巻く
》》》》
クオンさんが揃えてくれた舞台。
クロノセイバーに属する人達が導いてくれたこの瞬間。
そして……俺の拳に答える様に心を研ぎ澄まして現れたアーガス。
こんなに願い通りの戦いに巡り会えるなんて思っても見なかった。
小惑星を足元に——
宇宙の星々を観客に——
俺は今、アーガスの信念宿す拳を全て受け切っている。
『俺の拳は何が足りないか!俺の意思は何が欠けているか!迷っても……考えても分からなかった!!』
一撃一撃が重く突き刺さる。
アーガスの操る
でもそうじゃ無い——質量から来る重さじゃ無い、こいつの信念が一撃に重みを与えている。
「ああ……当然だ!俺はあんたが理解出来ないそれをこの背に背負ってる!だからあんたを超えられる!!」
今までは殺意と暴力しか宿らず、我流のボクシング染みた拳撃の応酬だったはずなのに……何かが吹っ切れた様に今まで見た事も無い格闘術の動きを組み込んで来る。
だけど俺だって、それを黙って打ち込ませる訳には行かない。
ボクシングの足捌きに混じる独特の体捌きに、古流武術の流れを見た俺は……それに合わせて回避の術を選択する。
フットワークが不規則に移り変わる様を瞬時に見抜き、熟練の度合いを見定めた俺は——むしろその古流武術に繋がる流れこそが、アーガス本来の動きと察した。
そしてそれこそが、アーガスの拳を殺意と暴力から脱却させた正統なる武術と悟らせた。
そう至った俺の心が熱く燃え
アーガスの思いは本物だから。
こいつは本当にあの漆黒の懐から抜け出し、己の真価を探る戦いに目覚めたと確信したから。
部活動で自分の力に酔い痴れて——
天才と煽てられる事に慣れ過ぎた過去の自分では、きっと巡り会えなかった勝負。
男と男の……格闘家と格闘家との真剣勝負。
これが
『そうかよ……だってら見せてみろ、
「いいぜ、アーガス!俺のこの力はあんたとの戦いのために会得した物だ!見せてやるよ……俺とアーデルハイドG‐3が一つとなる力を!」
「あんたとあんたの愛機——スーパーフレーム
今こそ俺の真価の全てをぶつける時。
俺とG‐3が……この
『
『だから答えて見せなさい!眼前で己を曝け出した、誇り高きライバルのために!』
「ありがとうございます、
後方で全てを見守るクオンさんが、
俺の拳の正義を、俺自身の手で証明する瞬間を。
その全てを感じた刹那——最も近くにいた相棒が……燃え上がる恒星の如き炎陽を纏った事に気が付いた。
「よし、行くぞアーデルハイドG‐3!これが俺達の
放つ咆哮と同時に周囲へ配した
無用に広げず——
ただアーガスと
「
踏み込む足を起点とし全ての動きを機体に重ねる。
これはアーガスの得意とするフェイントを交えた我流ボクシング――その動きに真っ向からぶつかる様に編み出した技。
元々自分が得意とする、静から動への無駄無き動作が主体の戦い方……それを捨ててアーガスの動きを越える様に研鑽を重ねた奥義だ。
眼前のライバルへ敬意を――
そのライバルが敗北したとてと誇れる技を――
かつて工藤大尉から掛けられた言葉――「いい負け方をしたな。」――に倣う様に。
アーガス・ファーマーが敗北から立ち上がる事が出来る様に――
「
あの日夢見た強い奴を超えるため……振りぬく剛腕が、恒星の如き爆炎を纏い
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