ファクトリー防衛戦
第45話 キルス小隊
中央評議会は文字通り太陽系の中核を担う機関であり、その系内外からの不測の事態への防衛手段として先の艦隊を配していたはずだ。
そこには艦艇だけではなく、オレ達の行く手を阻んだフレーム部隊を初めとする機動兵装隊も含まれる。
が、有人フレームによる戦略防衛機構そのものが未だ発展途上の
アステロイドベルトより内縁――火星宙域の戦火拡大を抑えられぬ現状が、それを如実に物語っていた。
「まさかキルス隊が配属されるとは……。評議会もどうやら本気のようだな。」
「そのようね。それだけ私達が、これ以降に拝命する部隊への期待を込めてるんでしょ?」
艦へ戻り――小ブリーフィングルームへ規定時間までに辿りつくため、急ぎ足であったオレと
その目を奪い足を止めさせたのは、評議会から配属された部隊が駆る機体搬入の一部始終――思考が目に映る機体から、知りうる人物の情報をフィードバックさせる。
【キルス隊】――中央評議会が擁する部隊でも、トップエリートの一角。
評議会が
そんな中オレは、違うベクトルで一抹の不安を吐露してしまう。
「ふぅ……面通しが
並み居る同志との過酷極まりない競争を、見事乗り越えたエリート中のエリートとの面会。
八年も引き
ある程度は覚悟しているが、無用な面倒事は遠慮したいのが本音であったオレは――想定通りの展開に見事に、巻き込まれる事となる。
》》》》
ささやかなオフから急遽呼び戻された【
【
今回はその部隊が
「おお!これは蒼き英雄殿と……掃除当番の少年よ……くくっ!」
どうやら上官からのバツであった艦内掃除中に迷い込だ先――救済艦隊旗艦の大掃除までこなしていた事が知れ渡っていた様で、呼び名が場にそぐわぬ愛称へ変更されていた格闘少年。
シャーロット中尉のいたずらっ子の様な笑顔に呼ばれ立ち止まる。
同じく同行するウォーロック少尉は、姉の意図までは測りかね――失礼ではと焦りながらも、あわあわ汗を浮かべながらぺこりと一礼を贈っている。
「あ~、どうもっす!といいますか、その愛称をこの様な時に使用するのはその……遠慮して欲しいっす……。」
クオンや
が、〈っす〉の語尾は少々余計な格闘少年。
少年としてはあの〈鬼美化のナスティ〉の活躍を知るゆえ、呼称そのものを否定はせず――むしろ光栄と捉えている。
だが流石に、パイロットとしての非常呼集の際までその呼称はと――ささやかな非難を救急救命の勇ましき令嬢へ送った。
その反応を楽しむかの様な救いの女神殿は、決して
先行きが楽しみである少年への期待の現れであった。
「すまぬすまぬ!しかしな、お前――いや、
「だがそんな我等の乗艦する、言うなれば我が家へ丁寧且つ隅々まで清潔さを運んでくれた貴君へ――皆を代表して礼を言わせてくれ、ありがとう少尉殿!」
予想外の返答と謝辞を
成り行きとは言えその掃除はバツであり――救急救命部隊旗艦〈
複雑な表情で返答に困る格闘少年――すかさず助け舟が、的確な采配を振るった男よりさらなる謝辞と共に差し出される。
「若造……中尉の言葉には私の意見も含まれる――遠慮なく謝辞を受けてやってくれ。なに分うちの救いの機手は下手な嘘がつけん――まさしく今の言葉は正真正銘彼女の言葉。誠意ある謝辞へ誠意を持って返すもまた、
あちらこちらからあげ
程なく召集場所へ行き着く一行が、小ブリーフィングルームの重厚な二重の自動扉を
その中で特に新参であるジーナ・メレーデン――そして
扉の向こうにはすでに部隊編入の手続きを終えた者達が陣取る。
しかしその気配――只ならぬ厳しさを
そう――今正に配属されたのは、正真正銘の軍部所属士官……
「揃ったようだな。では各々紹介を――」
ソシャール管理者である
本来許容する人数ギリギリでもあり、窮屈さも
だが窮屈の原因の際たるものはやはり、【キルス隊】隊長の
サッパリと切り上げた頭髪で、側面及び後ろ髪も短く刈り上げられる。
取り分けその表情が数々の試練を乗り越え、刻まれたと思しき眉間の
出生で言えば地球は中東――年の頃は地上年齢で言う所の三十代から四十代辺りだが、確実にそれ以上に歳を重ねた様な歴戦のオーラに包まれる。
その両隣には【キルス隊】きっての隊員が悠々と構える。
左に地上は、大陸中華国出身と思しき長身と鍛えられた肉体――隊長に負けず劣らずの切れ長の
右には身長こそ二人には僅かに及ばぬが、二人以上に隆々とした筋肉の鎧を
隊長だけではない――そこがこの【キルス隊】のエリートたる
【
事もあろうにその正規軍人である鉄仮面の男自ら歩み出す。
しかしその先んじて足を向けた先――それは
そして小さな巨人を地で行く勇ましきご令嬢へ向き――鉄仮面と言われた部隊長が……深き謝辞と共に一礼を贈る。
「お久しゅうございます、シャーロット中尉。先の我が部隊……防衛任務孤立の折には――大変お世話になりました。」
その場にいた大尉クラスの【
鉄仮面の部隊長と言う先入観から、まさかの自分より下の階級に相当する者に対し――深々と
「おう!あの時は大変だったな、バンハーロー大尉殿!だがそちらの部下達の無事が何よりだ!どうだ?その者達は今も
バンハーロー大尉――そう呼んだ鉄仮面の部隊長へ、その場にいた新参までもを動揺させる救いの女神殿の言葉。
鉄仮面の部隊長が
「その者達」とはここに同席する隊員ではない――別の者達を指しているのは明白である。
質問へ未だ感謝の念に絶えぬ表情で、揺らぐ鉄仮面のまま首肯を返す部隊長殿。
すでにこの状況を生み出した張本人である救いの女神――シャーロット中尉の名声は、この
【
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