第41話 救命艦隊、檜舞台へ舞え!
中央評議会で事態を目の当たりにした、会議重役面々――ただ立ち尽くし、呆然と一部始終を見守るほかなかった。
評議会とて、決して【
だが今――その被害の只中にあるはその評議会が
しかしそれは現れた――
議会室の中空投影式大型モニターパネルに移りこむ雷鳴。
そこから放たれる弾丸と閃光が、降り注ぐ無数の岩雨を
「何だ……あれは……!?まさか――まさか、
技術の無許可使用にて出頭した、C・T・Oが
無断使用の機体への対応を迫ろうとした重役が、口を結び
モニターに映る光景が、その行為の必要性を問いかけていたのだ。
「この場を借りて皆さんへ報告しとこう思いますけど、あの
【アル・カンデ】統括管理者の言葉——議会重鎮らは耳を疑った。
語られた事実、未だかつて身障者が
それだけでは無い——その者が
しかしその中——議員代表の叩き上げ議長閣下だけが、事を知りえた口調で重い口を開いた。
「認めざるを得まい……。皆も既に感じたであろう、この
議長閣下の言葉で、議員らの表情は驚愕が斜め上を通り過ぎた激震に打たれた。
朧げながらに脳裏に浮かんだ知識——多くの
だが——眼前ににそれは誕生した。
この
人類史上霊長類の上位存在と言われる者——【
「今
議長閣下はそう述べると、ただ静かに蒼き勇姿を見据えていた。
未来と呼ばれた者が、生命を救うために
》》》》
降り注ぐ天災――それは予想以上の巨大なる飛来者によって
通常太陽系に飛来する小惑星の規模はよほどの事が無い限り、小規模のサイズであった。
それは太陽系の最も外縁――1光年弱の距離にある太陽系最果て、【エッジワース・カイパーベルト】より軌道を外れた物が重力に引かれて主惑星へ接近・落下する。
彗星の巣とも称されるこの最果ては、
対して火星~木星圏間のアステロイドベルトは、それらより小規模とされるも充分な危険を
要因として太陽系外縁や、その果てからの飛来物は――太陽までの間に存在し強力な超重力圏を持つ木星によって、多くが吸い寄せられ内縁までの被害を軽減しているのだ。
ゆえにこのアステロイドベルトより降り注ぎ、未だ途切れぬ小惑星の雨は――太陽系外縁より飛来し、且つ木星の超重力圏範囲外から訪れた大型の小惑星に起因する可能性が浮かび上がる。
『旗艦ビックハーケン及び、各評議会艦隊は指定座標――
後方座標にて
破損著しい艦でも辛うじて移動可能な距離へ待機するそこへ、
『負傷者、重傷者が発生した艦は座標移動後――速やかに救護艦〈
『メーデー!こちら護衛艦ハンドアクス!艦内誘爆だっ……畜生――機関員が取り残された……機関出力停止!だめだ……扉が、くそっ……助けてくれっっ!!』
ビッグハーケンに近い損害の艦より飛び込む悲痛――通常の艦隊航宙護衛艦クラスなら、最低20~40名の隊員で艦を制御しているはずである。
しかし逆を言えば、あらゆる面でオートメーション化されていると言えるため――動力機関停止が、致命的な被害を
最低限の非常設備などは、一部手動での操作が可能な様に設計される――が、その悲痛に混じるは異常を来たした手動設備に絶望した声。
助けが必要――だが、これが正規の軍属下であるならば犠牲が想定を越える場合……被害拡大を防ぐ手立てとして、甚大な被害を受けた仲間の艦を見捨てると言う選択を余儀なくされる。
現に通信は防衛軍旗艦へも届いている――しかし、この微小惑星を含む流星群は止む気配が感じられない。
最初の微小惑星飛来ですでに甚大なダメージを追う時点で、この艦隊の災害防衛機能は当てにならないのは証明済み。
「くっ……こちら旗艦ビックハーケン……!今は全艦隊の避難が最優先……貴艦の救助は……っっ!」
防衛艦隊の艦隊指令――二の句が告げられない。
宣言すれば仲間を見殺しにすると同等――それでも軍属の部隊であれば、それが選ばざるを得ない決断。
それを無視して暴挙に出れば、先のC・T・Oの二の舞である。
太陽系全域の目を鑑みれば――それを律する立場である中央評議会が、その様な失態を演じる訳にはいかないのだ。
そこへ救いが――見殺しを宣言する決断、迷う評議会艦隊指令へ救いの雄たけびが舞い込んだ。
『こちら【
旗艦ビックハーケンとすれ違いざま――艦隊指令の目を横切る白と赤を纏う機体群が、誘爆により下手をすれば自壊しかねない護衛艦へ飛ぶ。
白と赤――国際救助の旗を掲げた【
『シャーロット中尉!こちらは流星群防衛で手が放せない――任せられるか!?』
襲う岩雨の止まぬ状況に、その後方――これらを誘発した物が飛来するのを危惧し警戒に当たっていた。
「当然だ!私達はそのためにここに来た!任せてもらおう――各機、目標は誘爆が確認された護衛艦だ!救済装備タイプCで接触――」
「クリシャっ、遅れるなよ!」
隊長シャーロットを中心に、五機の救済部隊機が
一見無骨で10mに満たない旧型フレームと新型フレーム中間の形状は、戦闘宙域で言えば頼りなく見える成りである。
だがこの機体は命を救うための機体――各状況に応じた救命装備を背部コンテナに多数収納した、救急救命のスペシャルカスタム。
迅速な救命活動を行うための最小限の装備――命を奪う代わりの命を救う装備の数々。
【
『了解です姉様っ!……っあっ!?』
「ばか者っ!任務中は隊長と呼ばんかっ!あと私は小さくないからなっ!」
定番となりつつある姉妹のやり取りを交えながらも、その視線は救うべき者がいる護衛艦へ向く。
誘爆が再発する事も踏まえれば猶予が残されていない――なればこそこの部隊の真骨頂、電光石化の救出活動をこなすまで。
最速の救助部隊は
「クリシャは隊を引き連れ、護衛艦の動ける人員救助に当たれ!再度誘爆の恐れがある――充分離れた場所から侵入するんだ!」
護衛艦の規模は重巡宙艦クラス――全長200Mには及ばぬサイズではあるが、機体後方・機関部近くが誘爆の影響で吹き飛んでいる。
シャーロットは迷わず機体の装備を選択――誘爆の恐れが最も高い機関部周辺へと機体進路を向けた。
航宙艦は物理鉄鋼弾よりも光学集束砲が主であるため、弾薬の誘爆よりも機関に接続される各動力ライン誘爆を考慮する必要がある。
現在の技術においても動力の大半を占める電気――電磁力は非常に安定性が悪く、ライン破損の負荷が確実に二次災害を誘発する引き金となる。
飛ぶシャーロットの指示へ副長ウォーロック少尉が返答するも、不安混じりの言葉が隊長の耳を突く。
『ですが隊長、そちらの方が危険です!いつ誘爆が再発するか――』
妹分より最もな不安が
だが【
「ばかもの!!だから私が行くのだろう!?迅速に事を成そうとする最中に、くだらぬ迷いを口にするな――」
と、口にした隊長が改めて言い直す。
「くっ……ばかは私だっ!くだらぬと言ったのは失言だ、許せ!私を
勢いと、部下を
その冷静さは直下で指示を仰ぐ妹少尉にも伝わり――
『申し訳ありません!ですが隊長も充分気を付けて下さい!――では各員、私に続けっ!』
ウォーロック少尉と残りの隊員機が、現状護衛艦で危険の少ない地点へ急行――取り付いたかと思うと電光石火の救助活動を開始した。
副長の素早き判断にニィと口端を吊り上げ、自慢の妹が護衛艦に取り付くと同時に機関部へ侵入。
すでに爆散していた隔壁から内部を慎重に確認――すぐさま負傷はあるが無事である機関員を発見。
そこからは救急隊の
宇宙空間と言う場所は、万が一艦の外に生きて出られたとしても……安心出来る場所など存在しない。
人は宇宙空間に投げ出された時、大自然の真の恐怖に貫かれる。
果てしない闇――もし行方を見失えば、もはや生きて安住の地へ戻る事叶わぬ世界。
それを救助活動に身を置く者は熟知している。
その命が生きるための、最後の砦が自分達である事も――
救急救命のスペシャリストが、宇宙で鮮烈なデビューを飾る一方――蒼き英雄は最終の波であろう微小惑星群をなぎ払っている最中。
しかし、すでに彼の視界には映っていた――この微小惑星の豪雨を見舞った正体を――
小惑星の災害危険レベルでは、低い方――だが、普通の機体なら手も足も出ぬ程の存在が飛来している。
一瞬の判断――それを違えればまだ降り注ぐ岩雨よりも危険な事態となる。
蒼き雷光は機体の出力を全開に――襲い来る小惑星へ目標を定め、
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