第14話 その狂気―8年を経て
『
敵対組織の強襲――その事態を
唐突であったが、C・T・Oに属する隊員にとって、いったいこの日をどれだけ夢見た事だろう。
「メインコア、【クロノギア】起動――
【
しかし、
当時のC・T・Oでは、二度とあの様な事態を招かぬためと火星圏と木星圏間にある中央評議会へ幾度となく訴え――順次制限を解除しながらの条件付きで、ようやく研究まで
――が、それと同時期にクオンが軍から離れ実質振り出しに戻された形であった。
「反応点臨界――
機体動力中心となるメインコア【クロノギア】――宇宙における、様々な種のエネルギー伝達と蓄積を可能とする【
生成過程の調整で、コアとしての性質を決定し必要に応じた運用が出来るため、まさに
しかし純度が【
それは宇宙で観測運用されるエネルギーが、低次元状態から高次元状態になると、安定維持可能な最低基準エネルギー量が
必要な設備やエネルギー量を確保するために、
極めて運用が困難なエネルギー――宇宙を構成する統一されたエネルギー状態、
「【
「
常に安定せず監視調整が必要な【
その機体中、一番のブラックボックスとされる機関――【
それら全ての不確定要素を
「クオン・サイガ……ジーナ・メレーデン――【グラディウス】=メテオ・ストライカー……ライズ・アップ!!」
蒼き閃雷を思わせる【
》》》》
蓄積したダメージはすでに限界――ミストルフィールドとて無限ではない。
格闘型であった、戦狼の男が操る機体とのタイマン勝負ならともかく、万能型の敵隊長機と重火線砲撃支援の機体まで相手にしては、防戦――すらままならない。
『……くっ……ああぁぁ!!』
【ザガー・カルツ】の容赦なき攻撃は、三機が入れ替わりながら――それでいて隙のない連携。
迎え撃つ少年はただひたすら防御に徹する。
フィールド出力を極限まで押さえ、迎撃する一撃にのみピンポイント展開。
この状況下――格闘少年は知らず知らずに、防御フィールドの効率的な運用を学んでいる。
その点においてはまさに奇跡的な防衛戦――倒せるはずの機体の
しかし――
「くっ……!
「くっそおおおぉぉっっ!!」
奇跡の防戦は、最早最後のフィールドチャージで幕を閉じる。
それ以降は回避ミスが致命的なダメージとなる。
【
赤き機体の哀れな奮闘を、漆黒の機体――コックピット内で
「
興味は尽きない――しかし、自分の想定ほどではないという意味なのか、言葉の真意を測りかねる隊長ヒュビネット。
「が――ゲームの駒としては、少々役不足だ……!」
相変わらずの、戦いをゲームと呼称する
本人の思惑はともかく、戦い――戦争行為は人類にとっての罪である。
その意がどうであれ、その言葉は非難すべきものだ。
「という事で――オレのゲームから、ご退場願おうか……!!」
もっとも、明らかに通常の人類とは違う何か――違う世界観にて、事を見透かす様なこの男はその非難すら意に介さないだろうが。
敵隊長機にとって、この
エイワス・ヒュビネットという男がどの様な思考を持っているかは、誰にも理解の及ぶ所ではないが。
男の機体が向ける火線砲が、赤き未熟者の操る【
――そのロック音が鳴り響くはずのモニター、突如として鳴り響く警告音とワーニング表示――
それは同時に他の【ザガー・カルツ】の機体をも射程に捕捉、電磁誘導で射出された実体弾の弾幕が雨の様に降り注ぐ。
『……っ!これは……!』
『な……何よ……、あぐっ!?』
『うおっ!?……何だってんだ……!?』
辛くも回避する隊長機――アーガス・ユーテリス機も回避不能と判断し、
当然隊長以外の二人は何が起きたのか、理解するために
『聞こえるか……
「えっ……?」
まさに危機一髪――フィールドが消失した瞬間を敵隊長機に狙われれば、未熟な
恐らく【
最悪の事態が、ソシャール内高空より飛来した蒼き存在によって回避される。
攻撃された【ザガー・カルツ】同様――
しかし、蒼き存在から発せられる声――同じく赤き機体に搭乗する
『……こちらC・T・O所属――クオン・サイガ大尉だ……!』
幾度となく帰還を願い彼の住むマンションを訪れたが――いつしかそれは、無駄足なのかと諦めの中にあった。
正確かどうか定かではない――が、彼の事情を知る
気付けば数年が経ち――帰還を願った大尉よりも遅れて軍へ配属された彼女も、それ以来声を聞く事すら叶わなかった。
もう二度と聞く事叶わない、英雄と言われた友人の声――この
片や天の助け――しかしそれを待ち望んだのは、彼女だけではなかった。
8年の歳月、積年の感情が蒼き機体に注がれ一人の男が打ち震える――狂気という異常なまでの執着心と共に。
『よく耐えてくれた……!後はこちらに任せて安全圏まで後退してくれ!』
赤き【
二人の敵対者がようやく、訪れた事態――急変した戦況の変化を知る。
「……オイ……オイオイ……!ちょっと待て……!?」
戦狼も慌てふためき――
「……【
砲撃手は事態に戦慄する――
敵部隊の動揺の中で、一番遅れて事態を飲み込む
『……あのフレーム……確か
『お帰り……クオン。もう……大丈夫……なんだね……。』
「すまない
ただ謝りたい――今はその言葉だけを
まずは事態の収拾、現状打開のために蒼き機体を再起させたのだから。
感動の再会――だがその背後で膨れ上がるのは――狂気――
「……フッ……ククッ……クククッ……!待ちかねたぞ、この時を……!」
『……隊長……!?』
今まで高みの見物を決め込み、部下を手駒に戦場を後方で操っていた男――その者が駆る漆黒の機体出力が急上昇する。
黒き咆哮が眠りから目覚めた狂気を力に変え――蒼き機体へ猛然と突撃する。
気炎が超速で吹き荒れ、黒き狂気は蒼を駆る者へ予期せぬ振動を――負の
「なっ……これは……!?」
轟音の刹那魂へと干渉した超振動――だが、それを思案する隙など生ませぬ衝突が蒼き機体のパイロットを襲う。
激突する蒼と漆黒――二つの機体の
クオンはその衝突と同時に、この宇宙が震えるかの
霊的に進化し宇宙に順化した高位に近き生命は、宇宙を量子レベルで震動させる【
【
「8年だっっっ!!」
この隊長が豹変した様に放つ感情――それは嫉妬にも似た狂気――
「あの全てが狂い始めた8年前――オレの計画を
恐らくは互いが引き合ったのは宿命という因果――
「あの時――8年前――!あの忌まわしき瞬間から……!!」
ヒュビネットという男がクオンという英雄に向けた狂気は、当人だけが直面した現実――そこで刻まれた心の傷跡の果て。
「再び現れる事を――待っていたぞ!
額に刻まれた大きな傷跡――8年の闇を物語るそれ。
「黒い機体――宇宙を
その傷を受けた事件から舞い戻った英雄は
「間違いない……!」
「全ての始まり――【漆黒の
天才エースパイロットと名高き男は狂気に染まり――
二つの因果は今――再びこの宇宙で邂逅する――
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