第5話 漆黒の嘲笑
遠隔操作による数体の
だが最早、外部工場区画を抜けた侵入者はソシャール内部へと入り込み、居住区への被害拡大も時間の問題となっていた。
「おらっ……よっと!」
格闘を得意とするアーガスが前へ前へと、障害となる機体を蹴散らしながら、
「……ったく!……アーガスっ、後がガラ空きなのよアンタ……!」
後方からの支援、ユーテリスによる重火線砲攻撃が、アーガス背後――
『おいおいお前達……、物足りんからといってがっつくなよ……!』
部下二人の快進撃を、
その動きは、何らかの機会を
「
「だめです……!目標……さらに侵攻、食い止められません!」
「くっ……、
そのあまりにも一方的な状況に、全てをモニタリングしているC・T・O本部も、手を
【ザガー・カルツ】――止まらぬ侵攻。
その中にあって、不気味に機を
その回線はC・T・Oを始めとする、【アル・カンデ】内の軍事回線――
「さて……、そろそろか……!」
C・T・O通信回線から敵機体より入電――
通信オペレーターはすぐその事態を、
「指令……!敵隊長機と思われる
「敵からだと……!?」
C・T・O内部――大モニターを中心に各モニターへ、余す事無く映像が映し出される。
その回線の向こう、【ザガー・カルツ】隊長――ヒュビネット大尉が不敵な笑みを浮かべ――宣言した。
『こちらはボンホース・イレーズン、【ザガー・カルツ】所属。特殊独立機動部隊隊長――エイワス・ヒュビネット大尉だ……!』
『【アル・カンデ】防衛機関、災害対策軍C・T・Oに告ぐ――』
「
「……その様おすな……。」
大胆不敵な、演説の様に語られる宣誓を尻目に、【アル・カンデ】の管理者
『本日中に天王星――【ムーラカナ】星皇本国政府に通達せよ……!』
『貴国が行っている、地球【
【
その意は、地上における黄色人種や白人など、人種と言う横の
宇宙の種において大半が、【
近年その
その際たる原因――それは人と人の抗争、〔戦争〕である。
『なお、これは最終警告である――』
この敵隊長機――この者も、そこに端を発した襲撃を慣行した。
C・T・Oの
しかし、それは――
『これに従わない場合――貴国らを三種族国家間、ひいては
『武力による……、
大胆不敵な、侵入者からの宣言――あまりにも一方的な
C・T・O指令である
『以上……、よく考える事だ……。』
「……通信……切れました。」
全ての歯がギリッ!と軋み、その溢れ出た怒りを吐き捨てる指令。
「……そんな……バカな事があるか……!彼らの同胞が、今もこの【アル・カンデ】に居住している――掛け替えのない日々を過ごしているのだ……!」
その怒りの中には、敵対者となった部隊――その国の、同胞達を
この指令――ただの敵対者への嫌悪などで、怒りをブチ
それほどの器を持つ男なのだ。
「その国に対して
指令の怒り――そこに含まれる意に対した同調。
【アル・カンデ】の管理者であるヤサカニ
「……彼らに
この
多くの命を奪い合う大戦の記録は、事実――残されてはいない。
「あまりに軽率な判断としか、言い様がおへんな……!!」
》》》》
【アル・カンデ】内――臨時駐車場区画。
突然の敵対者侵攻――その
情報統制が敷かれ、居住民への報告は現状
そんな中、この駐車場では軍下士官に属する隊員が、関連施設への管理・監視任務についているが、一様に重い
「……このソシャール……大丈夫なのかよ……?」
「こんな機体見たこともないし……。この機動性……
流出する映像に、早くも隊員は臆病風に吹かれ、弱腰になる――が、その隊員に気合を叩きつける男。
「オタオタしてんじゃねえよっ!大尉自ら、
気合が弱腰隊員に
その男は整備Tきっての腕っ節を持つ、チーフメカニック マケディ軍曹。
少々大柄で、短くややボサボサに感じる黒髪。
野蛮な感じがするが――少しだけである……。
「それより大尉が戻ったら、すぐに防護シャッターを――って……ほら見ろ、行ってる
「さっさとシャッターを下ろす……準備……を?」
マケディが大尉の車を見る。
軍曹も大尉――
だが軍曹は疑問に思う。
いや――それは車が違うとか、故障してるとかそういう事ではない。
大尉の車が飛ばしている――それも猛スピードで。
そして軍曹の脳裏に、大尉という女性の性格が鮮明に浮かぶ。
刹那――軍曹マケディは絶叫と共に、その場の全員へ警告する――
「ぜ……全員っっ……退避ーーーーっっ!!」
その駐車場内へ、待ちわびた大尉の車がダイナミック入庫を決める。
爆音と激しいタイヤスモーク――スキール音が空気を裂き、真横になりながらカウンターステアで超絶コントロール。
そして、
からくもその、ダイナミック入庫を回避した隊員の面々。
噴出する冷や汗と共に爆発寸前の心臓を、なんとか深呼吸で落ち着かせていた。
これがC・T・O名物、
何事もなかったかの様に、ドアが斜め上方に開きドライバーと、スカウトを受けた少年が降車する。
――いや、少年に何事もないと言うのは無理な話だった。
「……大丈夫?……ごめん……ちょっと調子に乗りすぎたわ……。」
「……うっぷ……。へ……平気ッス……。
完全に振り回され、グロッキーな少年。
パイロットが、乗る前から使い物にならなくなったらどうするのかと、思わざるを得ない光景である。
まさに脳裏に思い描いた通りの惨状に、さすがのマケディ軍曹が鬼気迫る表情(号泣?)で危険なアクロバット大尉を
「
「死ぬかと思ったぞこの大尉ーーーっっ!!(号泣)」
軍曹の怒りと悲しみ?の混じった怒号に、気分を害した大尉はムスッとして恨めしそうに
「……あら……?ちゃんと
問題はそこじゃないとの、ツッコミが入りそうな屁理屈である。
「それに緊急事態でしょ……?私の
中型サイズの
宇宙での、ガソリン燃料使用は原則禁止であるため、木星各衛星で産出したメタンハイドレード及びアルコール系燃料がハイブリッドで使用される。
数少ない、宇宙間でモータービークルを製造する【Y・Tオートモーター】が手がけるフラッグシップカー、【アンシュリーク TYPE RS】が彼女の愛車である。
「さあっ……、
「……あ……ハイッ!」
待望のフレームパイロットを引き連れ、軍曹への対応はやや冷たいままでその場を後にする大尉。
そしてその、相変わらずのそっけない態度にマケディ軍曹は
「全くあの大尉は……!毎度毎度……ぅおのれ~~!!」
「……まあまあチーフ……ここは落ち着い……て。」
さしもの部下もなだめに掛かる――が、
「そこが良いと思っちまうんだよ!!こんちくしょ~~~っ!!」
「なんですと~~~~!!?」
臨時駐車場に、謎のコントが響き渡った――
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