舞い上がる太陽
第1話 忍びよる闇
――地球西暦2026年
地上では繁栄が生み出した闇によって、文明の進歩が
世界はその行き詰まり打開のため、太古より栄し
超先進文明――
その純血種――レゾナの民と呼称される民は、かつての地球上に存在した【ムー大陸】の沈没後も【
地球西暦で言う2000年代の時点での繁栄は、その
》》》》
ネオ
地球文明進化の監視・管理を担う者達――天王星に首都を置く、新世代のラムー帝国が太陽系内にて最も重要とする中立宙域……太陽系第5惑星【木星】。
同星系で最大の大きさを持つこの巨大惑星は、60を越える衛星群と4つの巨大衛星を持つ事で知られている。
その一つ水と氷の衛星である、【エウロパ】衛星軌道
【ソシャール】と呼ばれる
文化と技術……繁栄に欠かせぬ物を兼ね備えながらも、ここは
人々が一丸となり――降り注ぐ脅威と戦い続けるその際たる物……【
人類が共存しなければならない、極限の自然災害であった。
そんな中――
広大な宇宙において、最も身近で恐るべき脅威――
――
違えた意思が引き起こす、人同士の争いこそ――宇宙で最大の脅威である。
》》》》
『よーし、このブロックが最後だ。ミラー壊すなよ!?』
資源採掘用の微惑星と連結されるソシャールは、通常基本動力を太陽光(
居住区画の可能生活数上限は、2000~6000万人規模とされる深淵に浮かぶ大都市
その外周へ設けられた資源及び集光ミラーパネル群は、そこに居住する
だが――外周に位置するそれは隕石及び流星群、さらには太陽風の被害に常に
故に定期的な確認交換を余儀なくされるが――それらを人類に代わり行う宇宙社会の要……【
対C・H/AM=010型、正規量産型の改修工事用カスタム機――広くソシャール修繕用に用いられる。
簡易装備を換装する事で、災害防御に対応が可能な人型を取るマルチ・システムは、ベースを同じとしながら軍用機体と異なる特殊機体として扱われるものだ。
「おーい、交代だぞ~。」
「ああ、ちょっと待ってくれ……、後の修繕箇所は……」
いつもの様に、修繕作業に当たっていた作業員は後少し――作業に没頭しながらも頭にちらついた休憩時間と言う言葉の誘惑に負ける。
過ぎった誘惑を堪能するため
O・M 作業員は、通常その管制制御をソシャール外部区画の修繕作業用・小型宇宙船から行う。
この日は小規模破損だったため、二人の当直作業員がたまの休暇も惜しんで勤務していた。
外装ミラーパネルは隕石・流星群対応特別製。
が、ソシャールのある場所は木星の超重力圏内――常に巨大な超重力の影響下にある宙域……その影響は星系内外より飛来する隕石・流星群にも及んだ。
結果――当直作業員が貴重な休暇も返上して、修繕を行うのが皮肉にも常態化していたのだ。
「O・M中心だからって手を抜いてると、後がこわいからな~……。」
「ははっ!……違いない……!」
すでに休憩時間に頭が切り替わる作業を終えた男は、交代で訪れた同僚へヒラヒラと手を泳がせ愚痴の同意を求める。
当然同僚も同じ感覚を共有する者――眉を
彼らには手馴れた一連作業、それは日常だった。
そんな一連作業の風景では見慣れないシグナルが、モニター前の今しがた急かされた作業員の目に飛び込んで来る。
「……ん?何だこれ。……フレーム……
「ああ?……何が……」
日常の作業ではおおよそ反応する事の無い、警告を示す点滅――思わず休憩の誘惑に負けていたはずの作業員が凝視する。
同僚の反応が気にかかり、引継ぎを終えた男もその何らかの異常を確認しようとした――その時、謎の振動と衝撃が作業船を突き抜けた。
炸裂音――砲弾が着弾したような衝撃と爆発。
決して大きくない作業用の宇宙船が木の葉の様に舞い――量子的真空中へ無数の破片と共に爆散する。
外部が破壊される小型宇宙船――モニター前の二人は、突如襲った衝撃で壁まで飛ばされ意識を喪失した。
対デブリ防壁のみの損傷、異常を感知した小型宇宙船は即座に救難モードに移行する。
破壊され――救難信号が宇宙の闇へ拡散される宇宙船を、かすめる様に飛行する謎の機体。
ソシャールへと接近する物の正体――それは二人の作業員が確認しようとしたそれである。
だがそれは、
その姿は戦略兵器、何らかの破壊を
『よっしゃーー、まずは一機っ!』
『ばっ……かねアンタ!余計な事をするなって言われてるのに、何を……』
襲来する謎の機体。
小銃サイズの火砲を構える、軽装を生かした動きをする武装機兵。
そのコックピットの中、一番手柄を叫んで喜ぶ操縦者の男。
右側を上げて固め、もう片方を垂らした前髪から覗く眼は、獲物を狙うかの様に鋭く研ぎ澄まされる。
その操縦者をもう一方の機体―― 一見同型であるが、大型の収束火線砲を始め複数の火線砲による重装の武装機兵、搭乗者である勝気な女性が通信越しに、今しがた喜んだ男を戒める。
そして、一連のやり取りの間に割って入るもう一つの声。
『おい、アーガス……。不用意な犠牲は作戦に支障を来たす……。あまり手をかけさせるなよ……?』
アーガスと呼ばれた男に、釘を刺す声の
だがその口調には、まるで嘲笑しているかの様な気配が
『けどよ隊長……!いくらなんでもこいつは歯ごたえが無さ過ぎるってヤツだろう……!?』
三体の
作業管制用小型船が発見したその時、照合を行う間もなく攻撃を受けた。
有人にて戦闘行為を行う謎のアンノウン……。
『……アンタ……、隊長の言う事聞いてたの……?不用意な犠牲を出すなって……!』
その末裔に当たる民族で構成される国家は、近年大規模戦闘用の戦略兵器をフレーム規格に追加した。
作業管制用小型船に被害を与えたその機体こそ、新規格フレームの正体――試作戦略有人兵器【シヴァ・フレーム】であった。
『こちらヒュビネット、バーゾベル……周辺宙域の重力は良好か?』
ヒュビネットと名乗った隊長格の兵士は通信を飛ばし、
『こちらバーゾベル。衛星【イオ】、【エウロパ】の潮汐力により安定域です。』
エウロパ
そこは常に木星の巨大な
しかし、そのソシャールとの星間移動は非常に厄介で、木星及び影響の強い二つの衛星が発する
容易に接近出来ない事から、外的要因の侵入によるソシャール被害が少ない事でも知られていた。
だが今――この謎の部隊は現に、ソシャール近郊に接近・襲撃を行っている。
ただならぬ事態の幕開けである事は、想像に
「さて……ゲーム開始と行こうか……!」
ヒュビネットと名乗る男は、自らが搭乗する機体の中で
【
この時より――太陽系において一つの争いと、それに立ち向かう人々の物語が幕を開ける。
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